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販路拡大の戦略を栃木県で成功させるための実践ガイド

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販路拡大戦略|栃木県の中小企業向け5つの手順

販路拡大の戦略を栃木県で成功させるための実践ガイド

2026/08/12

栃木県で販路拡大に取り組みたいものの、「誰に、何を、どの方法で売ればよいか分からない」「展示会やECに費用をかけても成果が出るか不安」と悩む中小企業は少なくありません。販路は増やすだけでは売上や利益につながらず、顧客設定、採算確認、テスト販売、効果測定が必要です。本記事では、県内企業が自社に合う販路を選び、支援機関や補助金も活用しながら実行・改善する手順を具体的に解説します。

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中小企業・小規模事業者様ごとの強みと地域性・市場ニーズを踏まえた現実的なコンサルをしています。現場の状況に合わせた「経営改善」、営業導線や訴求内容を見直して元営業の経験を活かした「売れる仕組みづくり」をご支援します。経営革新等支援機関として認定されています。

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目次

    販路拡大とは|栃木県企業が取り組む目的

    販路拡大とは|栃木県企業が取り組む目的

    販路拡大とは、自社の商品やサービスを購入する顧客との接点を増やし、売上と利益を継続的に生み出せる販売経路を広げる取り組みです。

    新しい取引先を探すことだけではありません。既存顧客への販売量を増やす、異なる顧客層へ提案する、販売地域を広げる、ECサイトや代理店などの販売チャネルを追加するといった取り組みも販路拡大に含まれます。

    ただし、販売先やチャネルを増やせば、必ず利益が増えるわけではありません。売上が増えても、営業費、販売手数料、広告費、物流費、在庫、返品などの負担が増えれば、利益や資金繰りが悪化する可能性があります。

    販路拡大へ取り組む際は、次の5点を明確にすることが重要です。

    ①誰に販売するか

    ②どのような課題や需要へ応えるか

    ③自社の何を強みとして伝えるか

    ④どの販売チャネルを使うか

    ⑤売上と利益をどの指標で確認するか

    販路を増やすこと自体を目的にせず、自社が継続的に利益を確保できる販売の仕組みをつくることが本来の目的です。

    販路拡大と販路開拓の違い

    販路拡大と販路開拓は、明確な公的定義が統一されている言葉ではなく、実務上は同じ意味で使われる場合もあります。

    一般的には、販路拡大は既存の販売先を含めて売上機会を広げる取り組み、販路開拓はこれまで取引のなかった顧客、地域、業界などへ新たに販売経路をつくる取り組みとして整理できます。

    比較項目   販路拡大   販路開拓

    主な目的  売上・利益を生む機会を広げる  新しい市場や顧客へ進出する

    対象  既存顧客と新規顧客の両方  主に新規顧客

    主な取り組み  既存顧客への追加提案、取扱店舗の増加、EC販売の強化  新業界への営業、県外・海外進出、新規代理店の獲得

    成果が出るまでの期間  既存顧客への提案なら比較的短い場合がある  信用構築や商談に時間を要する場合がある

    主なリスク  値引き、在庫増、チャネル間の競合  営業費の増加、市場ニーズとの不一致

    確認する指標  顧客単価、購入頻度、粗利益、リピート率  商談数、商談化率、受注率、顧客獲得単価

    例えば、県内の既存取引先へ新商品を提案し、1社当たりの取引額を増やす取り組みは販路拡大です。一方、これまで取引のなかった首都圏の企業へ営業し、新しい取引先を獲得する取り組みは販路開拓に当たります。

    自社ECサイトを立ち上げた場合も、サイトを作っただけでは販路を開拓したとはいえません。サイトへ顧客を集め、注文、決済、配送、問い合わせ対応まで機能し、継続的な購入につながって初めて販売経路として成立します。

    販路は顧客へ商品を届けるまでの仕組みを指す

    販路を考える際は、「どこで売るか」だけではなく、顧客が商品やサービスを知り、購入し、受け取るまでの流れを確認します。

    段階    主な接点・機能

    認知   紹介、検索、SNS、広告、展示会、営業訪問

    比較・検討   ホームページ、カタログ、提案書、見積書、商談

    注文・契約   店舗、ECサイト、電話、代理店、営業担当者

    決済   現金、振込、クレジットカード、掛取引

    納品・提供   店頭、配送、訪問、オンライン、取引先経由

    継続購入   アフターフォロー、追加提案、定期購入、契約更新

    例えば、展示会へ出展して名刺を集めても、その後の連絡、見積もり、試作品の提供、商談管理ができていなければ受注にはつながりません。

    SNSのフォロワーが増えた場合も、問い合わせや購入へ進む導線がなければ、販路拡大の成果とは判断できません。

    一つの施策だけを見るのではなく、認知から受注、継続購入までの流れを設計する必要があります。

    販路拡大には4つの方向がある

    中小企業の販路拡大は、顧客と商品・サービスの組み合わせによって、次の4つに整理できます。

    顧客と商品・サービス  取り組み例  主な注意点

    既存顧客×既存商品  購入頻度の向上、追加提案、休眠顧客への再提案  過度な値引きを避ける

    新規顧客×既存商品  新地域、新業界、EC、展示会、代理店  顧客獲得費と商談期間を確認する

    既存顧客×新商品  関連商品の開発、上位商品、保守サービス  顧客の要望を確認してから開発する

    新規顧客×新商品  新規事業、海外展開、異業種連携  投資と不確実性が大きい

    一般的に、既存顧客へ既存商品を追加提案する方法は、自社や商品への理解があるため、比較的取り組みやすい販路拡大です。

    反対に、新規顧客へ新商品を販売する方法は、商品開発と顧客開拓を同時に行う必要があります。投資額が大きく、成果が出るまでに時間がかかる可能性があるため、小規模なテスト販売から始める必要があります。

    「新しい販路を探す」と考える前に、既存顧客へ販売できていない商品がないか、過去に取引があった休眠顧客へ再提案できないかも確認しましょう。

    BtoBとBtoCでは販路拡大の方法が異なる

    企業向けに販売するBtoBと、一般消費者向けに販売するBtoCでは、顧客が購入を判断するまでの流れが異なります。

    比較項目   BtoB   BtoC

    主な顧客  企業、自治体、団体、医療機関等  一般消費者

    購入判断  複数の担当者や決裁者が関与する  個人または家族が判断する

    商談期間  数週間から数か月以上になる場合がある  比較的短い場合が多い

    主な販路  営業、紹介、展示会、商談会、代理店  店舗、EC、SNS、催事、モール

    主な判断基準  品質、価格、納期、実績、供給力、保守  価格、使いやすさ、評判、デザイン、体験

    主なKPI  商談数、見積数、受注率、受注粗利益  購入率、客単価、リピート率、獲得単価

    栃木県内の製造業が法人取引を増やす場合、SNSの閲覧数より、商談数、図面・見積依頼数、試作件数、受注率を確認する方が重要です。

    一方、食品や工芸品を一般消費者へ販売する場合は、店舗やECサイトへの流入数、購入率、客単価、リピート率、配送費などが判断材料になります。

    自社がBtoBとBtoCのどちらを対象にするかを明確にせず、話題の販促方法だけを取り入れても、販路拡大にはつながりにくくなります。

    販路拡大は売上ではなく利益で判断する

    販路拡大の成果を判断するときは、売上高だけを見てはいけません。

    基本的には、次のように販路ごとの利益を確認します。

    ◆販路別の利益=売上高-売上原価-販売手数料-広告費-物流費-その他の追加費用

    例えば、ECサイトで月100万円を売り上げても、商品原価が50万円、広告費が20万円、販売手数料と決済手数料が10万円、梱包・配送費が15万円かかった場合、残る金額は5万円です。

    ◆売上100万円-原価50万円-広告費20万円-手数料10万円-梱包・配送費15万円=5万円

    さらに、受注処理や問い合わせ対応に必要な人件費を考慮すると、利益が残らない可能性もあります。

    販路拡大では、「いくら売れたか」だけでなく、「いくら利益が残ったか」「必要な資金を回収できたか」まで確認する必要があります。

    販路拡大戦略を立てるための現状分析

    販路拡大戦略を立てるための現状分析

    販路拡大を始める前に、自社の顧客、商品・サービス、販売地域、売上、利益、営業体制を分析する必要があります。

    「県外へ販売したい」「ECサイトを始めたい」「展示会へ出展したい」という考えだけでは、販路拡大戦略になりません。販売方法を先に決めると、顧客ニーズと合わない施策へ費用や人員を投入する可能性があります。

    最初に確認すべきなのは、次の5項目です。

    現在、誰が購入しているか

    どの商品・サービスが選ばれているか

    どの顧客・商品・販路で利益が出ているか

    自社が選ばれている理由は何か

    新しい受注へ対応できる人員・設備・資金があるか

    これらを整理したうえで、狙う顧客と市場を決め、自社の強み、採算、供給力が合う販路を選びます。

    販路拡大で狙う顧客と市場の決め方

    中小企業の販路拡大では、「できるだけ多くの人へ売る」という考え方は適していません。

    人員、予算、生産能力が限られているため、対象を広げすぎると営業活動が分散し、誰にも十分な提案ができなくなるからです。

    中小企業基盤整備機構も、市場を細分化し、自社が得意とする分野へ経営資源を集中することが、中小企業の基本戦略になると説明しています。

    出典:J-Net21「市場の細分化は何のために行うのですか?」

    販路拡大で狙う市場は、市場規模の大きさだけで決めるのではなく、次の条件を総合的に確認します。

    確認項目     主な内容

    顧客ニーズ   自社の商品・サービスで解決できる課題があるか

    市場規模   必要な売上を得られる顧客数や需要があるか

    成長性   将来も需要が維持・拡大する可能性があるか

    競争環境   競合が多すぎないか、価格競争にならないか

    自社の強み   品質、技術、納期、対応力などを活かせるか

    到達可能性   営業、紹介、EC、代理店等で顧客へ接触できるか

    採算性   販売費や物流費を差し引いて利益が残るか

    供給可能性   必要な数量、品質、納期へ継続して対応できるか

    現在の売上を顧客・商品・販路別に分ける

    新しい市場を探す前に、現在の売上がどこから生まれているかを確認します。

    直近1~3年程度の売上を、次の項目で分類しましょう。

    ・顧客別

    ・商品・サービス別

    ・業界別

    ・地域別

    ・販路別

    ・営業担当者別

    ・新規顧客・既存顧客別

    ・月別・季節別

    例えば、顧客別売上を次のように整理します。

    顧客  年間売上高  売上構成比  粗利益率  取引年数  今後の見通し

    A社  3,000万円  30%  18%  15年  発注減少の可能性

    B社  2,000万円  20%  25%  8年  横ばい

    C社  1,000万円  10%  35%  3年  増加傾向

    その他  4,000万円  40%  28%  -  -

    合計  1億円  100%  -  -  -

    売上高だけを見るとA社が最も重要に見えます。しかし、粗利益率や今後の発注見通しまで確認すると、C社と似た顧客を増やす方が、利益の改善につながる可能性があります。

    既存顧客の中から、次の特徴を持つ顧客を探しましょう。

    ・粗利益率が高い

    ・継続的に購入している

    ・値引き要求が少ない

    ・自社の強みを評価している

    ・追加提案を受け入れている

    ・支払い条件に問題がない

    ・今後も需要の増加が見込まれる

    ・ほかの顧客を紹介している

    優良顧客に共通する業種、規模、地域、購入理由を把握すると、新たに狙う顧客像を決めやすくなります。

    売上が減少している原因を分ける

    売上減少の原因を確認せず、新規顧客の獲得だけを進めてはいけません。

    売上は、基本的に次の要素へ分けられます。

    売上高=顧客数×購入単価×購入頻度

    BtoB企業の場合は、次のようにも整理できます。

    売上高=取引先数×1社当たり受注件数×1件当たり受注額

    売上が減少している場合は、どの要素が変化したかを確認します。

    売上減少の原因  確認する内容  主な対応例

    顧客数の減少  解約、廃業、競合への切り替え  新規顧客開拓、休眠顧客への再提案

    購入頻度の低下  発注間隔、来店頻度、リピート率  継続提案、定期契約、利用促進

    購入単価の低下  小口化、低価格商品への移行  上位商品、セット提案、価格改定

    販売数量の減少  市場縮小、顧客の生産調整  新業界・新地域への進出

    営業機会の減少  訪問件数、問い合わせ数、商談数  情報発信、紹介、展示会、営業改善

    受注率の低下  見積価格、納期、提案内容  失注理由の確認、提案・条件の改善

    例えば、問い合わせ数は変わらないのに受注が減っている場合、認知度ではなく、価格、提案内容、納期などに問題がある可能性があります。この状態で広告を増やしても、問い合わせ後の受注率が低いままでは利益につながりません。

    反対に、受注率は高いものの問い合わせが少ない場合は、ホームページ、紹介、展示会、営業活動など、顧客との接点を増やす施策が必要です。

    顧客を共通する条件で分ける

    顧客を「県内企業」「若い人」「観光客」などの大きな区分だけで捉えると、具体的な提案をつくれません。

    顧客を、共通するニーズや購入行動によって細分化します。

    BtoBでは、次の条件が使えます。

    分類項目    分類例

    業種  製造業、建設業、食品、医療、宿泊業等

    企業規模  従業員数、売上高、店舗数、工場数

    地域  栃木県内、北関東、首都圏、全国、海外

    用途  自社利用、部品組込み、再販売、業務委託

    発注量  大ロット、小ロット、試作、単発、定期

    課題  コスト削減、短納期、品質改善、人手不足

    購入条件  価格重視、品質重視、納期重視、実績重視

    意思決定  経営者、購買部門、現場責任者、技術部門

    BtoCでは、次の条件が考えられます。

    分類項目    分類例

    居住地域  県内、首都圏、観光客、海外

    年齢・家族構成  単身、子育て世帯、シニア等

    利用目的  自宅用、贈答用、観光、体験、記念日

    購入場所  稔店舗、ECモール、自社EC、催事

    重視する価値  価格、品質、地域性、希少性、利便性

    購入頻度  日常購入、季節購入、単発購入、定期購入

    情報源  検索、SNS、口コミ、紹介、広告

    ただし、年齢や居住地域だけでは、購入理由を十分に説明できません。

    例えば「30~50代の首都圏在住者」という条件だけでなく、「栃木県らしい贈答品を探しており、品質と配送の確実性を重視する人」まで具体化すると、商品、価格、情報発信、販売場所を検討しやすくなります。

    顧客が解決したい課題を特定する

    顧客は、商品そのものではなく、商品を利用することで得られる効果を求めています。

    製造業の取引先であれば、次のような課題が考えられます。

    ・小ロットへ対応できる加工先が見つからない

    ・試作品を短納期で作りたい

    ・特定の材質を加工できる企業が少ない

    ・外注先の品質が安定しない

    ・設計から加工まで一括で依頼したい

    ・人手不足のため工程の一部を外注したい

    食品事業者の顧客であれば、次のような需要が考えられます。

    ・地域性が伝わる贈答品を探している

    ・小分けで保存しやすい商品が欲しい

    ・業務用として安定供給してほしい

    ・観光客へ説明しやすい商品が欲しい

    ・栃木県産原料を使った商品を扱いたい

    ・季節ごとの売場をつくりたい

    顧客の課題を確認するときは、自社内の想像だけで決めず、次の情報を集めます。

    ・既存顧客への聞き取り

    ・問い合わせ内容

    ・商談記録

    ・失注理由

    ・クレームや返品理由

    ・営業担当者の報告

    ・ECサイトの検索・購入データ

    ・レビューやアンケート

    ・展示会・商談会で受けた質問

    ・競合商品の説明や価格

    中小企業基盤整備機構も、市場開拓では取引先や消費者の意見を吸い上げる仕組みが重要だと説明しています。

    出典:J-Net21「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」

    自社が選ばれなかった理由も確認する

    成約した顧客の意見だけを聞くと、自社へ好意的な情報に偏ります。

    市場を判断するためには、次の相手からも情報を集める必要があります。

    ・見積もり後に失注した顧客

    ・試作品だけで取引が終わった顧客

    ・一度購入した後に離れた顧客

    ・商談後に連絡が途絶えた顧客

    ・競合商品を選んだ顧客

    ・自社の商品を扱わなかった小売店・代理店

    失注理由は、「価格が高い」だけとは限りません。

    ・必要な数量へ対応できない

    ・納期が合わない

    ・実績や認証が不足している

    ・商品の違いが分からない

    契約や発注の手続きが面倒

    ・配送条件が合わない

    ・担当者の対応が遅い

    ・購入後の支援が不明確

    ・既存取引先から変更する理由がない

    こうした理由を把握すると、広告や営業件数を増やす前に改善すべき点が分かります。

    市場規模と変化を公的データで調べる

    狙う市場を決める際は、経験や感覚だけでなく、公的統計も確認します。

    地域別の人口、産業構造、事業所数、人流などを調べる場合は、地域経済分析システムRESASを利用できます。RESASでは、人口、産業構造、人流、事業所立地などのデータを地域別に確認できます。

    出典:地域経済分析システムRESAS

    また、政府統計の総合窓口e-Statでは、人口、家計、事業所、商業、工業など、各府省が公表する統計を検索できます。

    出典:政府統計の総合窓口e-Stat

    市場調査では、次のような情報を確認します。

    ・対象地域の人口と世帯数

    ・年齢構成

    ・事業所数と従業者数

    ・対象業界の市場規模

    ・新設・廃業事業所数

    ・観光客数と宿泊者数

    ・商業販売額

    ・消費支出

    ・人口や事業所数の将来見通し

    ・競合企業・店舗の立地

    ・商圏内の昼間人口や人流

    ただし、市場規模が大きいことと、自社が受注できることは別です。

    市場全体が大きくても、大手企業が強い、認証が必要、価格競争が激しい、営業に長期間かかるといった場合は、中小企業が参入しにくい可能性があります。

    市場規模を自社が獲得できる範囲まで絞る

    市場を検討するときは、次の3段階に分けると整理しやすくなります。

    市場の段階     内容

    潜在市場   商品・サービスを利用する可能性がある市場全体

    対象市場   自社の商品、地域、価格、供給条件で販売できる市場

    獲得可能市場   営業力や予算を踏まえ、実際に獲得を目指せる市場

    例えば、栃木県内の金属加工会社が、全国の製造業すべてを対象にするのは現実的ではありません。

    自社が小ロット・短納期を強みとしているなら、次のように対象を絞ります。

    ◆北関東・首都圏にあり、試作品や小ロット部品を外注する産業機械メーカー

    さらに、保有設備、加工可能な材質、製品サイズ、必要な認証、輸送距離などによって、実際に営業できる企業を絞り込みます。

    対象となる企業数が100社あり、そのうち年間10社との商談、3社との新規取引を目標とするなら、営業活動の規模や担当者数を具体的に計画できます。

    競合だけでなく代替手段を確認する

    競合分析では、同じ商品を販売する企業だけを見るのではなく、顧客が自社の商品を購入しない場合に選ぶ方法も確認します。

    例えば、金属加工会社の競合・代替手段には次のものがあります。

    ・ほかの金属加工会社

    ・海外調達

    ・顧客による内製化

    ・別の素材や加工方法

    ・3Dプリンター等の新技術

    ・設計変更による部品自体の廃止

    店舗型事業の場合は、近隣の同業店だけでなく、ECサイト、宅配、レンタル、サブスクリプションなども代替手段になる可能性があります。

    競合については、次の項目を比較します。

    比較項目     確認する内容

    商品・サービス   品質、機能、品ぞろえ

    価格   販売価格、送料、追加料金

    顧客   主な業種、地域、利用目的

    販路   店舗、EC、代理店、直接営業

    納期   標準納期、短納期対応

    実績   導入事例、取引企業、認証

    情報発信   ホームページ、SNS、広告

    支援   保守、相談、返品、アフターサービス

    強み   技術、ブランド、立地、対応力

    競合よりすべての面で優れる必要はありません。

    「小ロットだけは強い」「県北地域なら訪問対応できる」「製品知識を持つ担当者が提案できる」など、特定の顧客が重視する条件で違いをつくることが重要です。

    狙う顧客を1文で表す

    市場分析を行ったら、狙う顧客を1文で表します。

    ◆当社が狙う顧客は、栃木県・茨城県・群馬県に拠点を持ち、小ロット部品の短納期調達に課題を抱える産業機械メーカーである。

    ◆当社が狙う顧客は、首都圏に住み、栃木県らしさと品質を重視して3,000~5,000円程度の贈答品を購入する消費者である。

    ◆当社が狙う顧客は、繁忙期の人手不足に悩み、下処理済み食材を安定的に仕入れたい県内の宿泊・飲食事業者である。

    「幅広い法人」「すべての観光客」「健康志向の人」など、対象が広すぎる表現は避けましょう。

    顧客像が具体的になるほど、商品、価格、提案内容、販路、営業先を決めやすくなります。

    候補市場を比較して優先順位を決める

    複数の候補がある場合は、評価表を作成します。

    評価項目   配点例   市場A   市場B   市場C

    顧客ニーズの強さ 20点
    市場の成長性 10点
    自社の強みとの適合 20点
    競合との差別化 10点

    粗利益の見込み 15点

    顧客への接触しやすさ 10点
    生産・提供体制 10点
    必要な投資・リスク 5点
    合計 100点

    点数だけで機械的に決める必要はありません。しかし、経営者の感覚だけで判断することを防ぎ、なぜその市場を優先したのか説明しやすくなります。

    販路拡大前に確認する強み・利益・供給力

    販路拡大前に確認する強み・利益・供給力

    狙う顧客と市場を決めても、自社の商品や体制がその市場の条件に合わなければ、販路拡大は実現しません。

    販路拡大前には、少なくとも次の4点を確認します。

    ①顧客から見た自社の強み

    ②販路別の売上と利益

    ③受注へ対応できる供給力

    ④販路拡大へ使える人員と資金

    自社の強みを顧客の評価から確認する

    「高品質」「丁寧な対応」「長年の実績」といった表現だけでは、顧客が自社を選ぶ理由を説明できません。

    強みは、顧客、競合、自社の3つの視点で確認します。

    視点    確認する質問

    顧客   顧客は何を評価して購入しているか

    競合   競合と比べて何が異なるか

    自社   その違いを継続して提供できるか

    例えば、「短納期対応」が強みであるなら、次のような根拠が必要です。

    ・通常7日かかる加工を3日で納品できる

    ・見積もりを原則24時間以内に回答している

    ・小ロットでも生産計画を柔軟に変更できる

    ・材料在庫や協力会社のネットワークがある

    ・過去1年間の納期遵守率が98%である

    「丁寧な対応」が強みであるなら、対応内容を具体化します。

    ・担当者が現場を訪問して仕様を確認する

    ・導入前に試作品を作成する

    ・納品後の使用方法まで説明する

    ・問い合わせへ当日中に回答する

    ・顧客ごとの要望を記録して次回提案へ反映する

    顧客へ「なぜ当社を選んだのか」「他社と比べて何が良かったか」を聞くと、自社が認識していなかった強みを発見できる場合があります。

    強みと単なる特徴を分ける

    自社が持っている設備、資格、立地、経験などは、それだけでは強みになりません。

    顧客にとって価値があり、競合との違いがあり、継続して提供できる場合に強みとなります。

    自社の特徴    顧客にとっての価値へ言い換えた例

    最新の加工設備がある  高精度加工と短納期へ対応できる

    創業50年である  長期間蓄積した技術と取引実績がある

    栃木県内に拠点がある  県内顧客へ迅速に訪問・配送できる

    小規模な会社である  仕様変更や小ロットへ柔軟に対応できる

    自社農場を持っている  原材料の生産履歴と品質を管理できる

    多くの商品を扱っている  顧客の用途に合わせて一括提案できる

    「設備がある」「資格がある」で説明を終えず、それによって顧客の課題をどのように解決できるかまで伝えましょう。

    顧客へ伝える価値を1文にまとめる

    自社の強みを整理したら、顧客へ提供する価値を1文で表します。

    ◆当社は、小ロット部品を短納期で必要とする北関東の製造業に対し、図面確認から加工・納品まで一貫して対応する。

    ◆当社は、栃木県らしい贈答品を探す首都圏の顧客に対し、県産原料と生産者の情報が分かる商品を、希望日に合わせて配送する。

    ◆当社は、人手不足に悩む宿泊・飲食事業者に対し、下処理済み食材を必要な量だけ安定供給し、厨房作業を削減する。

    この文章に、対象顧客、顧客の課題、自社の提供内容が含まれているか確認してください。

    商品・顧客・販路別の粗利益を確認する

    販路拡大では、売上が増えても利益が減ることがあります。

    まず、商品・サービスごとの粗利益を計算します。

    ◆粗利益=売上高-売上原価

    ◆粗利益率=粗利益÷売上高×100

    例えば、販売価格が1万円、売上原価が6,000円であれば、粗利益は4,000円、粗利益率は40%です。

    ◆1万円-6,000円=4,000円

    ◆4,000円÷1万円×100=40%

    しかし、新しい販路では、次の費用が追加される可能性があります。

    ・ECモールの販売手数料

    ・決済手数料

    ・広告費

    ・代理店・卸売会社への手数料

    ・展示会の出展費

    ・交通費・宿泊費

    ・梱包費・配送費

    ・営業担当者の人件費

    ・返品・交換費用

    ・システム利用料

    ・翻訳・輸出関連費用

    ・保守・問い合わせ対応費

    そのため、販路別には次のように計算します。

    ◆販路別の利益=売上高-売上原価-販路ごとの追加費用

    例えば、販売価格1万円の商品をECモールで販売し、売上原価6,000円、販売・決済手数料1,000円、広告費1,500円、梱包・配送費1,000円がかかった場合、残る金額は500円です。

    ◆1万円-6,000円-1,000円-1,500円-1,000円=500円

    売上高だけを見れば1万円増えていますが、実際に残る金額は500円です。問い合わせや発送にかかる人件費まで含めると、赤字になる可能性があります。

    値引きが利益へ与える影響を確認する

    卸売や代理店を利用すると、販売数量が増える一方、直接販売より価格が下がる場合があります。

    例えば、販売価格1万円、変動費6,000円の商品では、1個当たりの限界利益は4,000円です。

    ◆1万円-6,000円=4,000円

    販売価格を8,000円へ下げ、変動費が変わらなければ、限界利益は2,000円になります。

    ◆8,000円-6,000円=2,000円

    売上を維持するだけでも、以前の2倍を販売しなければ同じ限界利益を得られません。

    ◆4,000円÷2,000円=2倍

    「大量に販売できるから」という理由だけで値引きや卸売を始めず、必要な販売数量と生産能力を確認しましょう。

    顧客獲得に必要な費用を計算する

    新規顧客を獲得するには、広告、展示会、営業訪問、サンプル提供などの費用がかかります。

    顧客獲得単価は、次の計算で確認できます。

    ◆顧客獲得単価=新規顧客獲得に使った費用÷新規顧客数

    例えば、展示会出展に50万円を使い、5社と新規取引を開始できた場合、1社当たりの顧客獲得単価は10万円です。

    ◆50万円÷5社=10万円

    ただし、名刺交換した企業数を新規顧客数として数えてはいけません。実際に受注した企業数で計算します。

    また、1社当たりの初回粗利益が5万円でも、その後に継続受注があれば、長期的には投資を回収できる可能性があります。

    次の項目も確認しましょう。

    ・初回受注額

    ・初回粗利益

    ・年間受注回数

    ・取引継続年数

    ・継続受注による粗利益

    ・保守・対応に必要な費用

    ・代金回収までの期間

    短期の売上だけでなく、継続取引から得られる利益を含めて判断する必要があります。

    販売数量が増えた場合の供給力を確認する

    販路拡大によって注文が増えても、生産やサービス提供が追いつかなければ、納期遅延、品質低下、クレームにつながります。

    事前に次の項目を確認します。

    確認項目    主な内容

    生産能力   1日・1か月当たりの最大生産量

    現在の稼働率   設備と人員にどの程度余裕があるか

    人員   営業、製造、発送、問い合わせに対応できるか

    原材料   必要量を安定して調達できるか

    設備   故障時の代替手段があるか

    品質   数量が増えても基準を維持できるか

    納期   顧客の希望納期へ継続的に対応できるか

    在庫   保管場所、使用期限、棚卸管理

    物流   梱包、配送、送料、破損時の対応

    外注先   数量増加時に協力を得られるか

    例えば、現在の月間生産量が1,000個、最大生産量が1,200個であれば、新しい販路で月500個を受注しても対応できません。

    残業や休日出勤で一時的に対応できても、人件費の増加や品質低下が生じる可能性があります。

    販路拡大前に、次の計算を行いましょう。

    ◆生産余力=最大生産量-現在の生産量

    ◆必要な生産能力=既存受注量+新規受注見込量

    供給力が不足する場合は、設備投資、採用、外注、受注量の制限、納期調整などを検討します。

    営業から納品後までの業務負担を確認する

    販路拡大で増えるのは、製造や仕入れだけではありません。

    次の業務も増加します。

    ・見込み顧客の選定

    ・電話・メール・訪問営業

    ・見積書・提案書の作成

    ・サンプルや試作品の提供

    ・契約条件の確認

    ・受注・在庫管理

    ・梱包・発送

    ・請求・入金管理

    ・問い合わせ対応

    ・返品・クレーム対応

    ・継続提案

    ・売上・利益の集計

    営業を経営者一人が担当している企業では、新規顧客が増えるほど、既存顧客への対応や経営管理の時間が不足する可能性があります。

    誰が、どの業務を、どの程度の時間で行うかを整理しましょう。

    業務   現在の担当者   新規販路で増える時間   対応方法

    商談・見積もり  経営者  月20時間  営業担当者と分担

    受注処理  事務担当者  月10時間  受注システムを導入

    梱包・発送  現場担当者  月30時間  作業手順を見直す

    問い合わせ  経営者  月10時間  FAQと回答例を作成

    売上集計  経理担当者  月5時間  販路別管理表を作成

    対応方法が決まらないまま販路を増やすと、売上は増えても社内が混乱し、既存顧客への対応品質が下がる可能性があります。

    売上増加前に必要となる運転資金を確認する

    販路拡大では、売上が入金される前に、仕入れ、製造、人件費、広告費、展示会費などの支払いが発生します。

    特にBtoB取引では、納品から入金まで1~3か月程度かかる場合があります。

    例えば、月300万円の新規受注が増え、原材料費・外注費が180万円、入金が納品の2か月後であれば、少なくとも2か月分の仕入資金として360万円程度が先に必要になります。

    ◆180万円×2か月=360万円

    さらに、人件費、物流費、広告費なども加わります。

    販路拡大前に、次の内容を月別の資金繰り表で確認しましょう。

    ・仕入代金の支払日

    ・給与・社会保険料の支払日

    ・広告費・出展費の支払日

    ・設備投資の支払日

    ・売上代金の入金日

    ・借入返済額

    ・必要な運転資金

    ・手元資金の最低残高

    売上が増えているのに資金が不足する「増収による資金繰り悪化」へ注意が必要です。

    新しい市場で必要となる条件を確認する

    新しい業界、地域、海外などへ進出する場合は、現在の取引では必要なかった条件を求められることがあります。

    ・業界固有の許認可

    ・品質管理体制

    ・製品規格

    ・ISO等の認証

    ・PL保険

    ・トレーサビリティ

    ・原材料・成分表示

    ・多言語対応

    ・輸出入手続き

    ・取引基本契約

    ・情報セキュリティ

    ・大口取引に対応する生産・在庫体制

    ・長い支払サイトへ耐える資金力

    例えば、大手企業との取引では、価格や品質だけでなく、事業継続計画、情報管理、環境対応などを確認される場合があります。

    市場へ参入してから準備不足が判明しないよう、商談前に必要条件を調査しましょう。

    販路拡大の実行可否を確認する

    最後に、狙う市場ごとに次の項目を確認します。

    確認項目     確認する内容

    顧客   狙う顧客が具体的になっている

    課題   顧客が解決したい問題を確認している

    強み   自社が選ばれる理由を根拠付きで説明できる

    市場   顧客数、需要、競合を調査している

    商品   顧客ニーズに合う仕様・価格になっている

    採算   販売費を差し引いても利益が残る

    供給   数量、品質、納期へ対応できる

    人員   営業、受注、納品、問い合わせの担当者がいる

    資金   入金までの運転資金を確保できる

    条件   許認可、認証、契約条件を確認している

    目標   売上・利益・顧客数の目標がある

    検証   小規模に試し、結果を確認できる

    すべての項目が完全にそろってから始める必要はありません。

    ただし、顧客、採算、供給力の3点が不明なまま、大規模な広告、ECサイト構築、展示会出展、設備投資などを進めるのは危険です。

    まずは既存データと顧客の声から仮説を立て、限られた地域、顧客、商品で検証できる状態をつくりましょう。

    次章では、BtoB・BtoCの違いを踏まえ、オンラインとオフラインの販路から、自社に適した方法を選ぶ考え方を解説します。

    販路拡大の方法を業種・顧客別に選ぶ

    販路拡大の方法を業種・顧客別に選ぶ

    販路拡大の方法には、営業訪問、紹介、展示会、商談会、店舗、卸売、代理店、ECサイト、SNS、Web広告などがあります。

    ただし、多くの方法を同時に始めれば成果が出るわけではありません。顧客が商品・サービスを探す方法、購入時に必要とする情報、商談期間、販売価格、物流条件などによって、適した販路は異なります。

    例えば、企業が使用する受注生産の部品と、一般消費者が購入する県産食品では、購入までの流れが違います。

    受注生産の部品では、加工技術、対応可能な材質、品質、納期、設備、取引実績などを確認したうえで、見積もりや試作へ進むのが一般的です。一方、県産食品では、価格、内容量、賞味期限、写真、口コミ、送料などを確認し、その場で購入する場合があります。

    販路を選ぶ際は、次の順番で考えましょう。

    ①狙う顧客を決める

    ②顧客が商品・取引先を探す場所を確認する

    ③購入までに必要な情報を整理する

    ④自社が対応できる販売方法を選ぶ

    ⑤必要な費用と得られる利益を試算する

    ⑥主力とする販路を1~2種類に絞る

    ⑦小規模に実施して成果を確認する

    話題になっている販促方法ではなく、顧客の購入行動と自社の経営資源に合う方法を選ぶことが重要です。

    販路拡大のオンライン・オフライン施策

    販路拡大の方法は、インターネットを使うオンライン施策と、対面や実店舗を中心とするオフライン施策に分けられます。

    区分   主な方法   特徴

    オンライン   自社サイト、EC、SNS、Web広告、メール、オンライン商談   地域を越えて顧客へ接触できる

    オフライン   営業訪問、紹介、展示会、商談会、店舗、催事、代理店   商品や担当者への信頼を得やすい

    組み合わせ   Web集客後の訪問、展示会後のメール、店舗とECの連携   認知から受注までを補完できる

    オンラインかオフラインのどちらか一方に限定する必要はありません。

    例えば、展示会で知り合った企業にメールで資料を送り、オンライン商談を行った後、工場訪問や試作へ進む方法があります。実店舗で商品を知った顧客が、次回からECサイトで購入する場合もあります。

    それぞれの役割を分け、顧客が次の行動へ進める導線をつくりましょう。

    自社ホームページで問い合わせを獲得する

    自社ホームページは、会社概要を掲載するだけの場所ではありません。検索、紹介、展示会などで自社を知った顧客が、取引できる企業かどうかを確認する場所です。

    BtoB企業のホームページでは、次の情報が求められます。

    ・対応できる製品・サービス

    ・加工技術や保有設備

    ・対応可能な材質・寸法・数量

    ・標準的な納期

    ・品質管理体制

    ・許認可・認証

    ・導入・取引事例

    ・対応地域

    ・見積もりの流れ

    ・問い合わせ方法

    BtoC企業では、次の情報が必要です。

    ・商品・サービスの内容

    ・販売価格

    ・写真・動画

    ・内容量・サイズ

    ・使用方法

    ・購入者が得られる効果

    ・送料と配送日

    ・返品・キャンセル条件

    ・店舗の所在地・営業時間

    ・購入・予約方法

    「高品質」「柔軟に対応」「お客様第一」などの抽象的な表現だけでは、競合との違いを判断できません。

    例えば、「小ロットに対応します」ではなく、「試作品1個から量産500個まで対応」など、数量や条件を具体的に示しましょう。

    ホームページへのアクセス数が増えても、問い合わせや購入へつながらなければ販路拡大の成果とはいえません。

    次の流れを確認する必要があります。

    ◆検索・紹介・広告→商品ページ→事例・実績→問い合わせ・購入→商談・受注

    問い合わせフォームが分かりにくい、スマートフォンで読みにくい、価格や納期が一切分からないといった問題があると、見込み顧客が途中で離脱する可能性があります。

    検索から見込み顧客を集める

    検索エンジンから顧客を集める方法には、SEOと検索広告があります。

    SEOは、自社の商品や顧客の課題に関するページを作成し、検索結果からホームページへ誘導する方法です。

    例えば、金属加工会社であれば、次のような内容が考えられます。

    ・対応できる加工方法

    ・材質別の加工事例

    ・小ロット・試作への対応

    ・短納期へ対応できる理由

    ・設備・品質管理体制

    ・よくある図面・見積もりの相談

    ・加工上の注意点

    食品事業者であれば、次のようなページが考えられます。

    ・商品の原材料と製造方法

    ・栃木県産原料の特徴

    ・贈答用・自宅用の選び方

    ・保存方法と賞味期限

    ・生産者や製造者の紹介

    ・飲食店・小売店向けの卸売案内

    ・業務用商品の規格と発注方法

    検索広告は、検索キーワードに応じて広告を表示し、自社サイトへ誘導する方法です。比較的早く見込み顧客へ接触できますが、広告費が継続的に発生します。

    SEOと検索広告は、次のように使い分けます。

    比較項目   SEO   検索広告

    成果までの期間  一般に時間がかかる  比較的早く表示できる

    主な費用  記事・ページの制作と更新  クリック等に応じた広告費

    継続性   ページが評価されれば流入が続く可能性  広告を停止すると流入も止まりやすい

    向いている目的  継続的な問い合わせ獲得  新商品、期間限定施策、需要確認

    注意点  内容の専門性と定期的な更新が必要  予算・対象地域・キーワードの管理が必要

    どちらを利用する場合も、アクセス数だけでなく、問い合わせ数、商談数、購入数、粗利益を確認します。

    自社ECとECモールを使い分ける

    ECを利用すると、実店舗の商圏を越えて商品を販売できます。

    中小企業基盤整備機構は、ECをBtoB、BtoC、CtoCなどに分類し、中小企業にとって新しい市場を開拓する手段の一つとして紹介しています。

    出典:J-Net21「EC(電子商取引)の基本戦略」

    ECには、主に自社ECとECモールがあります。

    比較項目   自社EC   ECモール

    集客  自社で集客する必要がある  モール利用者へ接触できる

    初期設定  サイト構築・決済・配送設定が必要  比較的始めやすい場合がある

    手数料  システム・決済費用等  販売手数料・広告費等

    顧客情報  自社で蓄積しやすい  利用できる情報に制限がある場合がある

    価格競争  ブランドや価値を伝えやすい  類似商品と比較されやすい

    運営ルール  自社で決められる  モールの規約に従う

    向いている企業  継続購入やブランド構築を重視する企業  まず販売機会を増やしたい企業

    ECサイトを作れば自動的に注文が入るわけではありません。

    次の業務を継続して行う必要があります。

    ・商品登録

    ・写真・説明文の作成

    ・在庫管理

    ・価格管理

    ・注文処理

    ・決済確認

    ・梱包・発送

    ・問い合わせ対応

    ・返品・交換

    ・レビュー対応

    ・売上・利益の分析

    ・広告・SNS等による集客

    特に、商品単価が低く、サイズや重量が大きい商品では、送料や梱包費が利益を圧迫する可能性があります。

    ECを始める前に、次の金額を試算しましょう。

    ◆ECの1件当たり利益=販売価格-商品原価-販売手数料-決済手数料-広告費-梱包・配送費

    商品が売れるかだけでなく、継続して利益が残るかを確認する必要があります。

    SNSは認知から購入までの役割を決める

    SNSは、商品の認知度向上、生産過程の紹介、顧客との交流などに利用できます。

    ただし、投稿数やフォロワー数が増えただけでは、販路拡大の成果とは判断できません。

    SNSを利用する場合は、役割を明確にします。

    SNSの役割   投稿する内容   次の行動

    認知  商品、店舗、製造現場、地域情報  ホームページを見る

    理解  使い方、製造方法、比較、よくある質問  商品詳細を確認する

    信頼  実績、担当者、生産者、顧客の利用場面  問い合わせる

    購入  販売開始、在庫、催事、キャンペーン  EC・店舗で購入する

    継続  活用方法、関連商品、保守情報  再購入・相談する

    例えば、製造業では完成品の写真だけでなく、加工可能な材質、精度、設備、検査方法、試作事例を発信すると、技術担当者や購買担当者が取引可否を判断しやすくなります。

    飲食・食品・観光では、商品の使用場面、店舗の雰囲気、季節情報、作り手の考えなどが、来店や購入を検討する材料になります。

    投稿からホームページ、問い合わせフォーム、ECサイト、予約ページへ進めるよう、リンクや案内を整備しましょう。

    メールで既存顧客と見込み顧客へ再提案する

    新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客、休眠顧客、展示会で接点を持った企業へのメールも販路拡大に利用できます。

    主な内容は次のとおりです。

    ・新商品・新サービスの案内

    ・導入・活用事例

    ・仕様変更や対応範囲の拡大

    ・セミナー・展示会の案内

    ・季節商品の販売開始

    ・保守・更新時期の案内

    ・以前の相談内容に基づく再提案

    一斉に同じ内容を送るだけではなく、業種、購入履歴、相談内容などによって分けると、相手に関係のある情報を届けやすくなります。

    ただし、送信先の同意、個人情報の管理、配信停止方法などを確認し、無差別な大量送信は避けてください。

    オンライン商談で地域外の顧客へ対応する

    オンライン商談は、県外の顧客へ訪問する前の情報確認や、短時間の打ち合わせに向いています。

    特に、次のような場面で活用できます。

    ・初回の会社・商品説明

    ・顧客課題の聞き取り

    ・見積条件の確認

    ・画面を共有した資料説明

    ・商品・設備の動画紹介

    ・定期的な進捗確認

    ・遠方顧客へのアフターフォロー

    一方、現物確認、設備確認、現場調査、複雑な仕様調整などは、訪問の方が適している場合があります。

    すべてをオンラインへ置き換えるのではなく、初回確認はオンライン、重要な仕様確認は訪問というように使い分けましょう。

    既存顧客への追加提案は取り組みやすい

    オフライン施策の中で最初に確認したいのが、既存顧客への追加提案です。

    既存顧客は、自社の品質、担当者、契約方法などを理解しているため、新規顧客より提案を進めやすい場合があります。

    次の可能性を確認しましょう。

    ・ほかの商品・サービスを提案できないか

    ・別の部署や店舗を紹介してもらえないか

    ・購入量・利用回数を増やせないか

    ・定期契約へ変更できないか

    ・保守・点検・教育を追加できないか

    ・顧客の新たな課題へ対応できないか

    ・以前断られた提案を見直せないか

    顧客別に「現在購入している商品」と「提案できる商品」を一覧にすると、提案漏れを確認できます。

    顧客  現在の取引  追加提案候補  顧客の課題  提案時期

    A社 部品加工 設計・試作 開発期間の短縮 新製品開発前

    B社 商品卸売 季節限定品 売場の変化 秋商戦前

    C社 単発研修 年間支援 社内定着 次年度計画前

    売りたい商品を一方的に勧めるのではなく、顧客の課題や今後の計画に合わせて提案することが重要です。

    紹介を受ける仕組みをつくる

    取引先、金融機関、商工会・商工会議所、業界団体、仕入先、専門家などから紹介を受ける方法もあります。

    紹介は、紹介者の信用があるため、まったく接点のない企業へ営業する場合より、話を聞いてもらいやすい可能性があります。

    ただし、「誰か紹介してください」と依頼するだけでは、紹介者も候補を判断できません。

    次の内容を簡潔に伝えましょう。

    ・どのような顧客を探しているか

    ・どのような課題を解決できるか

    ・提供できる商品・サービス

    ・対応地域

    ・取引条件

    ・主な実績

    ・紹介後の連絡担当者

    例えば、次のように具体化します。

    ◆北関東で、試作品や小ロット部品の短納期調達に悩んでいる産業機械メーカーを探しています。当社はステンレスとアルミの切削加工に対応し、図面確認から納品まで一貫して行います。

    紹介を受けた後は、紹介者任せにせず、自社から速やかに連絡し、結果も報告しましょう。

    営業訪問・電話・手紙で対象企業へ直接提案する

    BtoBでは、対象企業を選定し、直接営業する方法があります。

    ただし、企業名簿へ順番に電話するだけでは、効率的な販路開拓になりません。

    営業前に、次の内容を調べます。

    ・企業の業種と事業内容

    ・製品・サービス

    ・拠点・工場

    ・従業員規模

    ・想定される課題

    ・自社との取引可能性

    ・提案する内容

    ・担当部署・役職

    ・接触する理由

    最初の連絡では、自社の説明を長く行うより、相手に関係する理由を伝えることが重要です。

    ◆当社は栃木県内で小ロットの金属加工を行っています。御社の産業機械向け部品について、試作や短納期案件でお役に立てる可能性があると考え、ご連絡しました。

    直接営業では、電話件数だけでなく、担当者接触数、面談数、見積依頼数、受注数まで記録します。

    展示会は出展前後の準備で成果が変わる

    展示会は、短期間で複数の見込み顧客へ商品や技術を紹介できる方法です。

    栃木県産業振興センターでは、県内中小企業向けに商談会・展示会等の情報や、展示会出展に関する助成制度を案内しています。開催内容や募集状況は年度ごとに異なるため、公式サイトで最新情報を確認してください。

    出典:栃木県産業振興センター「商談会・展示会・展示商談会」

    展示会では、ブースを設置するだけでは受注につながりません。

    出展前には、次の内容を準備します。

    ・出会いたい顧客の業種・役職

    ・展示する商品・技術

    ・伝える強み

    ・商談目標数

    ・説明資料・サンプル

    ・担当者の役割

    ・名刺・相談内容の記録方法

    ・展示会後の連絡手順

    ・見積もり・試作への進め方

    展示会後は、名刺交換した相手を同じように扱わず、関心度によって分けます。

    優先度    相手の状態    主な対応

    高  具体的な課題・案件・時期がある  早期に連絡し、商談・見積もりへ進む

    中  興味はあるが案件が決まっていない  事例や資料を送り、定期的に連絡する

    低  情報収集が中心  メール配信等で関係を維持する

    出展者数や名刺獲得数ではなく、商談数、見積数、試作数、受注数、受注粗利益で成果を確認します。

    商談会は相手企業を事前に調べる

    商談会は、限られた時間で買い手企業や発注企業へ提案する機会です。

    栃木県産業振興センターでは、とちぎビジネスマッチング商談会など、発注企業と受注企業の商談機会を設けています。

    出典:栃木県産業振興センター「とちぎビジネスマッチング商談会」

    商談会へ参加する場合は、相手企業について次の内容を確認します。

    ・主な製品・事業

    ・調達したい商品・技術

    ・想定される用途

    ・必要な数量

    ・品質・認証条件

    ・現在の取引先

    ・自社を提案する理由

    ・商談後に進めたい段階

    商談時間内に会社案内をすべて説明するのではなく、相手の課題を聞き、自社が対応できる部分を具体的に伝えます。

    卸売・小売店を通じて販売する

    食品、雑貨、工芸品などでは、卸売会社、小売店、百貨店、道の駅、観光施設などを通じて販売する方法があります。

    自社だけでは接触できない顧客へ販売できる一方、次の条件を確認する必要があります。

    ・卸価格

    ・小売価格

    ・最低発注数量

    ・納品頻度

    ・送料負担

    ・支払条件

    ・返品条件

    ・賞味期限・使用期限

    ・販売実績の報告

    ・販促物の提供

    ・売れ残りへの対応

    ・ほかの販路との価格差

    小売店が商品を仕入れる際は、商品の魅力だけでなく、店舗に利益が残るか、継続して供給できるか、売場で説明しやすいかも確認します。

    提案資料には、次の情報を入れましょう。

    ・商品の特徴

    ・想定する購入者

    ・上代・卸価格

    ・小売店の粗利益

    ・最低発注数

    ・ケース入数

    ・サイズ・重量

    ・賞味期限

    ・納期

    ・販促方法

    ・販売実績

    ・問い合わせ先

    代理店は契約後の販売活動を管理する

    代理店を利用すると、代理店が持つ顧客基盤や営業力を活用できます。業務システム、設備、法人向けサービスなどで利用される場合があります。

    ただし、契約すれば代理店が積極的に販売するとは限りません。

    次の条件を明確にします。

    ・販売対象

    ・担当地域

    ・販売手数料

    ・価格決定権

    ・独占・非独占

    ・営業目標

    ・見込み顧客の管理

    ・商品説明・研修

    ・見積もりと契約の担当

    ・保守・クレーム対応

    ・顧客情報の取り扱い

    ・契約終了時の引継ぎ

    代理店へ任せきりにせず、商品情報、提案資料、成功事例を共有し、定期的に案件状況を確認する必要があります。

    店舗・催事・イベントで顧客の反応を確認する

    店舗、物産展、マルシェ、期間限定販売などは、顧客へ直接商品を説明し、反応を確認できる方法です。

    特に、新商品について次の内容を確認する機会になります。

    ・商品を手に取った人数

    ・購入した人数

    ・購入を迷った理由

    ・価格への反応

    ・パッケージへの反応

    ・よく質問された内容

    ・購入した顧客の属性

    ・一緒に購入された商品

    ・再購入の意向

    売上高だけでなく、顧客の言葉や行動を記録し、商品改良、価格、説明方法、ECサイト等へ反映しましょう。

    オンラインとオフラインをつなげる

    オンラインとオフラインは、別々に管理するのではなく、顧客が行き来できる状態をつくります。

    最初の接点   次の接点   受注・購入への導線

    展示会   メール・オンライン商談   訪問・見積もり・試作

    営業訪問   ホームページ・事例   問い合わせ・契約

    SNS   ECサイト   購入・再購入

    実店舗   SNS・メール   来店促進・EC購入

    検索   ホームページ   相談・商談

    セミナー   個別相談   提案・契約

    例えば、展示会で接点を持った企業が後からホームページを確認したとき、展示内容や事例が掲載されていなければ、商談の機会を失う可能性があります。

    店舗で購入した顧客が、商品に同封された案内からECサイトへ進めれば、次回の購入を地域外から受けられます。

    販路ごとに分断せず、認知、比較、購入、継続の流れを設計することが重要です。

    販路拡大のBtoB・BtoC別チャネル選定

    BtoBは商談と信頼構築を重視する

    BtoBでは、商品を知った担当者だけで購入を決められない場合があります。

    現場担当者、技術担当者、購買担当者、経営者など、複数の関係者が判断するため、問い合わせから受注までに時間がかかることがあります。

    一般的な流れは次のとおりです。

    ◆認知→情報収集→問い合わせ→面談→仕様確認→見積もり→社内決裁→契約→納品

    BtoBで利用しやすいチャネルは次のとおりです。

    チャネル    向いている場面    主な注意点

    既存顧客への提案  追加受注・別部署への展開  顧客の課題を確認する

    紹介  信用が重視される  取引紹介後の対応を迅速に行う

    直接営業  対象企業が明確  事前調査と提案理由が必要

    展示会  技術・商品を広く紹介  出展後の追客が必要

    商談会  買い手・発注企業との接触  相手別の準備が必要

    自社サイト  検索・紹介後の比較  技術、実績、条件を具体化する

    オンライン商談  遠方顧客との初回相談   現地確認と使い分ける

    代理店  広域販売・専門  営業手数料と活動管理が必要

    BtoB EC  定型商品・継続  受注価格、在庫、取引条件を整備する

    BtoBでは、見込み顧客が少なく、1件当たりの受注額が大きい場合があります。そのため、不特定多数への広告より、対象企業を絞った直接営業や紹介の方が適していることがあります。

    一方、規格が決まった部品、消耗品、業務用品などでは、BtoB ECやWeb経由の問い合わせが有効な場合があります。

    BtoBでは意思決定者ごとに情報を変える

    同じ企業内でも、担当者によって重視する内容が異なります。

    相手     主に確認する内容

    現場担当者   使いやすさ、作業時間、品質

    技術担当者   仕様、精度、材質、技術的な対応

    購買担当者   価格、納期、供給力、取引条件

    経理・管理部門   支払い、契約、リスク、継続費用

    経営者   投資効果、経営課題、将来性

    製品カタログだけでは、経営者が投資効果を判断できない場合があります。反対に、経営効果だけを説明しても、技術担当者が仕様を判断できません。

    相手に応じて、仕様書、導入効果、見積書、事例、投資回収の試算などを用意しましょう。

    製造業は対応できる技術と条件を明確にする

    栃木県内の製造業が販路を拡大する場合は、「何でも対応します」ではなく、得意分野を具体的に示すことが重要です。

    例えば、次のように整理します。

    項目      記載例

    加工内容   切削、板金、溶接、表面処理

    材質   鉄、ステンレス、アルミ等

    サイズ   対応可能な最大・最小寸法

    数量   試作1個、小ロット、量産

    精度   対応できる公差・検査

    納期   標準納期、短納期対応

    設備   保有設備と加工能力

    品質   検査体制、認証、記録

    実績   対応した業界・用途

    地域   訪問・配送できる範囲

    この情報をホームページ、営業資料、展示会パネルで統一すると、見込み顧客が取引可能性を判断しやすくなります。

    製造業では、直接営業、紹介、商談会、展示会、自社サイトを組み合わせる方法が考えられます。

    法人向けサービスは課題と成果物を明確にする

    コンサルティング、IT、研修、保守、デザインなどの法人向けサービスは、商品を目で確認しにくいため、支援内容を具体化する必要があります。

    次の内容を示しましょう。

    ・どのような企業を対象とするか

    ・どの経営課題へ対応するか

    ・何を実施するか

    ・どの成果物を提供するか

    ・期間はどの程度か

    ・顧客側で必要な作業は何か

    ・費用はいくらか

    ・どの指標で効果を確認するか

    ・対応できない業務は何か

    法人向けサービスでは、セミナー、紹介、自社サイト、専門記事、個別相談などから商談へつなげる方法があります。

    無料相談だけを増やすのではなく、相談後に診断、提案、契約へ進む流れを決めておきましょう。

    BtoCは購入しやすさと継続購入を重視する

    BtoCでは、消費者本人が比較・購入する場合が多く、BtoBより短い期間で購入を判断する傾向があります。

    一般的な流れは次のとおりです。

    ◆認知→興味→比較→購入→使用・体験→再購入・紹介

    BtoCで利用しやすいチャネルは次のとおりです。

    チャネル   向いている場面   主な注意点

    実店舗  接客・体験・地域顧客  商圏と営業時間の制約がある

    自社  ECブランド・継続購入  自社で集客する必要がある

    ECモール  新規顧客との接点  手数料・価格競争に注意する

    SNS  認知・共感・利用場面  投稿から購入まで導線をつくる

    催事・物産展  新商品の紹介・対面販売  一時的な売上で終わらせない

    小売店・卸売  販売地域の拡大  卸価格・返品・在庫条件を確認する

    ふるさと納税  地域産品の認知  制度・返礼品の条件を確認する

    口コミ・紹介  信頼形成  不適切なレビュー誘導を避ける

    BtoCでは、購入前の不安を減らす情報が重要です。

    ・誰に向いているか

    ・どのような場面で使うか

    ・ほかの商品との違い

    ・価格

    ・サイズ・内容量

    ・素材・原材料

    ・保存・使用方法

    ・配送・受け取り方法

    ・返品・キャンセル条件

    ・問い合わせ先

    写真やデザインだけでなく、購入後に困らない情報を提供しましょう。

    食品・県産品は用途と販売場所を対応させる

    食品や県産品では、同じ商品でも用途によって適した販路が異なります。

    顧客の用途   適した販路の例   必要な対応

    日常消費  スーパー、直売所、EC  価格、容量、再購入しやすさ

    贈答  百貨店、自社EC、ギフト店  包装、配送日、のし、説明

    観光土産  道の駅、観光施設、宿泊施設  地域性、持ち運び、保存

    業務用  飲食店、ホテル、卸売  規格、安定供給、見積もり

    季節需要  催事、物産展、EC  販売期間、在庫、納期

    ふるさと納税  自治体の返礼品  制度要件、発送体制

    例えば、贈答用商品であれば、商品の味だけでなく、箱、包装、配送日、賞味期限、価格帯が重要です。観光土産であれば、地域性、持ち運びやすさ、売場で説明しやすい表示が求められます。

    商品を変えず販路だけを増やすのではなく、販路に合わせて容量、包装、価格、説明を見直す必要があります。

    店舗・観光サービスは地域外顧客との接点をつくる

    飲食店、宿泊施設、体験サービスなどは、商品を配送する事業と異なり、顧客に現地へ来てもらう必要があります。

    主なチャネルには、次のものがあります。

    ・自社ホームページ

    ・地図検索

    ・予約サイト

    ・旅行予約サイト

    ・SNS

    ・観光施設・宿泊施設からの紹介

    ・地域イベント

    ・旅行会社

    ・リピーター・口コミ

    ・地域事業者との共同プラン

    来店・来訪型の事業では、次の情報を分かりやすく掲載します。

    ・所在地と行き方

    ・駐車場

    ・営業時間

    ・料金

    ・予約方法

    ・所要時間

    ・利用条件

    ・写真

    ・キャンセル条件

    ・周辺観光

    ・季節による違い

    オンラインで認知を広げても、予約画面が使いにくい、電話がつながらない、駐車場が分からないといった問題があると、利用につながりません。

    直接販売と間接販売を比較する

    販路は、自社が顧客へ直接販売する方法と、卸売会社、代理店、小売店等を通す間接販売に分けられます。

    比較項目   直接販売   間接販売

    顧客との関係  直接把握できる  仲介先を通す

    販売価格  自社で設定しやすい  卸価格・手数料が必要

    顧客情報   蓄積しやすい  得られる情報に制限がある場合がある

    営業範囲  自社の営業力に左右される  仲介先の販路を利用できる

    運用負担  受注・問い合わせ等を自社で行う  一部を仲介先が担う

    利益率  比較的高くできる可能性  手数料等で下がる可能性

    向いている企業  顧客対応と販売体制がある  広域展開や販売先拡大を急ぐ

    直接販売と間接販売を併用する場合は、価格差に注意が必要です。

    例えば、自社ECで小売店より大幅に安く販売すると、小売店が商品を扱いにくくなる可能性があります。代理店へ顧客を紹介した後、自社が直接低価格で契約すれば、代理店との信頼関係を損ないます。

    次のルールを事前に決めましょう。

    ・販路ごとの販売価格

    ・卸価格・代理店手数料

    ・顧客の担当区分

    ・値引きできる範囲

    ・問い合わせの振り分け

    ・販路間で競合した場合の対応

    ・キャンペーン価格

    ・顧客情報の共有方法

    主力販路と補助販路を決める

    中小企業がすべての販路を同じ水準で運営するのは困難です。

    最も受注・利益につながる可能性が高い販路を主力販路とし、ほかの販路はその活動を補う役割にします。

    例えば、次のように整理できます。

    業種   主力販路   補助販路

    金属加工業  対象企業への直接営業  自社サイト、展示会、紹介

    食品製造業  小売・卸売  催事、自社EC、SNS

    観光施設  予約サイト・自社サイト  SNS、地域連携、口コミ

    法人向けサービス  紹介・個別相談  セミナー、専門記事、メール

    小売店  実店舗  EC、SNS、催事

    業務用食品  飲食店・宿泊施設への営業  商談会、紹介、自社サイト

    主力販路を決めず、SNS、EC、展示会、営業をすべて少しずつ行うと、いずれも成果が出る前に人員や予算が不足する可能性があります。

    販路を比較表で評価する

    候補となる販路は、次のような表で比較します。

    評価項目  配点例   営業訪問  展示会  自社EC  卸売

    狙う顧客との接触 20点

    自社の強みとの適合 15点

    利益の見込み 15点

    初期費用 10点

    継続費用 10点

    成果までの期間 10点

    運用できる人員 10点

    顧客情報の蓄積 5点

    リスク 5点

    合計 100点

    評価するときは、「多くの企業が使っているか」ではなく、自社の顧客、利益、供給力に合うかを確認します。

    販路ごとの目標と担当者を決める

    実施する販路を選んだら、次の内容を決めます。

    ・対象顧客

    ・提案する商品・サービス

    ・販路を選んだ理由

    ・実施期間

    ・使用する予算

    ・担当者

    ・顧客へ伝える内容

    ・問い合わせ後の対応

    ・売上・利益目標

    ・継続・中止を判断する時期

    例えば、次のように整理します。

    項目     内容

    対象顧客   北関東の産業機械メーカー

    提案内容   小ロット・短納期の金属加工

    主力販路   対象企業への直接営業

    補助販路   自社サイト、商談会

    実施期間   6か月

    予算   50万円

    担当者   経営者・営業担当者

    目標   商談20社、見積もり10社、新規受注3社

    確認指標   商談数、見積数、受注率、受注粗利益

    見直し時期    3か月後・6か月後

    販路は一度決めたら固定するものではありません。

    顧客の反応、受注率、利益、運用負担を確認し、効果の低い方法は内容を修正するか、別の販路へ切り替える必要があります。

    次章では、選んだ販路を小規模に試すテストマーケティングの手順と、販路拡大の成果を判断するKPI、予算、改善基準について解説します。

    販路拡大を小さく試して成果を測る

    販路拡大を小さく試して成果を測る

    販路拡大の方法を選んでも、最初から多額の広告費を使ったり、大量の在庫を用意したりする必要はありません。

    顧客、商品、価格、販売チャネルについて立てた仮説が正しいとは限らないため、まず対象や期間を限定してテストマーケティングを行います。

    テストマーケティングの目的は、短期間で売上を最大化することではありません。次の点を確認し、継続的に利益を確保できる販路かどうかを判断することが目的です。

    ・想定した顧客に需要があるか

    ・顧客の課題と商品・サービスが合っているか

    ・強みや価値が正しく伝わるか

    ・提示した価格で購入されるか

    ・選んだ販売チャネルで顧客へ到達できるか

    ・受注や販売に必要な費用を回収できるか

    ・自社の人員と設備で継続的に対応できるか

    ・購入後に再注文や紹介が発生するか

    基本的には、次の順番で進めます。

    検証したい仮説を決める

    ・対象顧客と販売方法を限定する

    ・期間、予算、販売数量の上限を決める

    ・成果を判断するKPIを設定する

    ・必要最小限の営業・販売体制を整える

    ・顧客へ実際に提案する

    ・数値と顧客の意見を記録する

    ・継続、改善、中止を判断する

    ・成果を確認してから投資を拡大する

    テスト前に判断基準を決めておかなければ、成果が出ていないにもかかわらず、「もう少し続ければ売れるかもしれない」と投資を続けてしまう可能性があります。

    反対に、BtoBのように商談から契約まで時間がかかる販路を、短期間の売上だけで中止することも避けなければなりません。

    販路の特徴に合わせて評価期間と指標を設定することが重要です。

    販路拡大のテストマーケティング手順

    検証する仮説を一文でまとめる

    最初に、「誰が、どのような理由で、何を、どの価格で購入するか」を仮説として整理します。

    例えば、次の形式でまとめます。

    ◆〇〇という課題を持つ顧客は、△△という価値を評価し、□□という販路で、価格○円の商品・サービスを購入する。

    栃木県内の金属加工会社が新しい法人顧客を開拓する場合は、次のような仮説を立てられます。

    ◆多品種少量生産を行う関東圏の産業機械メーカーは、短納期で試作品を加工できる体制を評価し、直接営業から見積もりを依頼する。

    食品会社が一般消費者向けのEC販売を試す場合は、次のように整理できます。

    ◆栃木県産の原材料を使った贈答品を探している首都圏の消費者は、地域性と贈りやすい包装を評価し、送料を含めて5,000円程度で購入する。

    仮説に含める主な項目は次のとおりです。

    項目     決める内容

    顧客   業種、地域、企業規模、年齢、用途など

    課題   顧客が困っていること、実現したいこと

    商品   提案する商品・サービス

    価値   品質、価格、短納期、地域性、利便性など

    価格   販売価格、送料、契約期間、最低発注量

    販路   営業、展示会、EC、店舗、代理店など

    行動   問い合わせ、商談、見積依頼、購入、再注文

    期間   いつからいつまで試すか

    判断基準   商談数、受注数、粗利益など

    「幅広い顧客へ販売して反応を見る」という計画では、誰に需要があったのか判断できません。最初のテストでは、対象を具体的に絞りましょう。

    一度に変更する条件を増やしすぎない

    顧客、商品、価格、広告表現、販売チャネルを同時に変更すると、何が結果に影響したのか分からなくなります。

    例えば、ECサイトで注文が入らなかった場合でも、次のような原因が考えられます。

    ・想定した顧客に需要がなかった

    ・商品の価値が伝わっていなかった

    ・価格が高かった

    ・送料が購入の負担になっていた

    ・商品ページの情報が不足していた

    ・決済方法が合わなかった

    ・広告を適切な顧客へ配信できていなかった

    ・配送日が利用目的と合わなかった

    原因を確認するには、基本条件を固定し、変更する項目を限定します。

    例えば、同じ商品と価格のまま広告の訴求内容を比較する、同じ顧客層へ異なる価格を提示するなど、一つずつ検証しましょう。

    テストの対象・期間・予算を限定する

    本格的な投資を始める前に、テストの上限を決めます。

    販路   テスト範囲の例   主に確認する内容

    法人への直接営業  対象企業30~50社へ提案  反応率、商談率、見積率、受注率

    展示会・商談会  1回出展し、有望先を20~30社に絞る  商談数、見積依頼、受注見込み

    自社EC  1商品・1顧客層に限定して2~3か月販売  購入率、客単価、獲得費、粗利益

    ECモール  出品商品と在庫数を限定する  手数料、価格競争、販売数量

    小売店への卸売  1~3店舗で期間・数量限定販売  販売率、返品、店舗からの評価

    催事・テスト販売  1会場または数日間で実施  来場者の反応、購入率、客単価

    新サービス  3~5社へ試験的に提供  利用状況、満足度、継続意向

    表の数値は一例です。商品の単価、購入頻度、商談期間、テストに使える資金によって適切な範囲は異なります。

    少なくとも次の上限を決めてください。

    ・テスト期間

    ・広告費や出展費

    ・試作品の製造費

    ・営業担当者の稼働時間

    ・生産・提供する数量

    ・無料提供や値引きの範囲

    ・在庫金額

    ・許容できる損失

    ・追加投資を判断する時期

    テストだからといって、採算を考えずに無料提供や大幅な値引きを行うと、通常価格で需要があるか確認できません。

    実施前の基準値を記録する

    テスト後の変化を確認するため、開始前の状態を記録します。

    例えば、次の数値です。

    ・月間問い合わせ数

    ・商談数

    ・見積件数

    ・新規顧客数

    ・顧客1社当たりの売上

    ・商品別の販売数量

    ・客単価

    ・粗利益

    ・リピート率

    ・営業に必要な時間

    ・広告費

    ・返品率

    ・在庫回転期間

    販路拡大によって売上が増えても、既存販路から顧客が移動しただけの場合があります。

    新しいECサイトの売上が増えた一方で実店舗の売上が同額減少した場合、全社として顧客や利益が増えているとは限りません。新規販路だけでなく、既存販路を含めた変化を確認しましょう。

    必要最小限の営業・販売体制を整える

    テスト段階で高額なホームページやシステムを完成させる必要はありません。

    ただし、顧客が内容を理解し、問い合わせや購入まで進める最低限の体制は必要です。

    BtoBでは、次の資料や仕組みを準備します。

    ・会社案内

    ・商品・技術資料

    ・対応可能な材質、数量、納期

    ・導入事例や加工事例

    ・価格または見積条件

    ・営業用の説明文

    ・問い合わせ窓口

    ・商談記録

    ・見積書と契約書

    ・試作品の提供条件

    ・商談後の連絡手順

    BtoCでは、次の内容を整えます。

    ・商品写真

    ・商品の特徴と利用方法

    ・価格と送料

    ・原材料、サイズ、内容量

    ・注文・決済方法

    ・配送時期

    ・返品・交換条件

    ・問い合わせ先

    ・個人情報の取り扱い

    ・購入後の案内

    説明不足によって購入されなかった場合、それは商品の需要ではなく、販売体制の問題です。顧客が判断するために必要な情報は、テスト段階でも明確にしましょう。

    顧客の意見だけでなく行動を確認する

    アンケートで「良い商品だと思う」「機会があれば購入したい」という回答を得ても、実際に購入されるとは限りません。

    テストマーケティングでは、次のような具体的な行動を確認します。

    ・問い合わせた

    ・資料を請求した

    ・商談へ進んだ

    ・見積もりを依頼した

    ・試作品を評価した

    ・商品ページを閲覧した

    ・カートへ入れた

    ・購入した

    ・通常価格で再購入した

    ・別の顧客を紹介した

    「この商品を買いたいですか」と聞くだけでなく、どの条件なら購入するか、なぜ購入しなかったかも確認します。

    数値と顧客の意見を分けて記録する

    テストで集める情報は、定量情報と定性情報に分けます。

    情報の種類     主な確認項目

    定量情報   提案数、反応数、商談数、見積数、受注数、販売数、売上、粗利益

    顧客獲得   広告費、営業費、顧客獲得単価、商談獲得単価

    顧客行動   ページ閲覧、問い合わせ、購入率、再購入率

    業務負担   営業時間、製造時間、出荷時間、問い合わせ対応時間

    定性情報   興味を持った理由、購入しなかった理由、希望価格、必要な機能

    競合情報   比較された商品、代替手段、選定基準

    継続条件   品質、価格、納期、数量、支払条件、保守体制

    売れなかった場合も、テストがすべて失敗だったとは限りません。

    「価格を下げれば買う」「サイズが違えば導入できる」「発注単位が小さければ検討する」など、改善につながる情報を得られれば、次のテストへ活用できます。

    反対に、商品は売れても、大幅な値引きや無料広告による一時的な結果であれば、販路として継続できるとは限りません。

    商談や購入に至らなかった理由を分類する

    断られた理由を「顧客に関心がなかった」で終わらせず、分類して記録します。

    ・顧客の課題と商品が合わない

    ・商品の違いが伝わらない

    ・価格が予算と合わない

    ・導入時期が合わない

    ・必要な品質や仕様を満たさない

    ・最低発注量が多い

    ・納期が長い

    ・取引実績がなく不安がある

    ・社内の決裁を通せない

    ・既存の取引先との契約がある

    ・配送費や手数料が高い

    ・購入方法が分かりにくい

    ・アフターフォローに不安がある

    同じ理由が複数の顧客から出ている場合は、個別の事情ではなく、商品や販売方法に共通する問題である可能性があります。

    テスト結果を事実と解釈に分ける

    結果を確認するときは、確認できた事実と、自社の解釈を分けます。

    区分     記載例

    事実   40社へ提案し、8社と商談、4社から見積依頼を受けた

    顧客の発言   短納期には関心があるが、量産価格が分からず判断できない

    自社の解釈   試作だけでなく量産時の価格を示せば受注率が上がる可能性がある

    次の検証   数量別の価格表を作成し、見積依頼のあった4社へ再提案する

    「商品が悪い」「営業担当者の説明が足りない」とすぐに結論づけず、事実をもとに次の仮説を立てましょう。

    外部支援を使う場合も検証内容を自社で決める

    中小企業基盤整備機構のJ-Net21では、テストマーケティングを、想定市場の企業から商品・サービスへの評価を集め、市場投入までの課題を確認する取り組みとして説明しています。ただし、支援者が営業を代行したり、販売先を保証したりする制度ではない点にも注意が必要です。

    出典:J-Net21「販路開拓コーディネート事業について教えてください」

    栃木県産業振興センターでも、販路開拓に関する専門家相談やテストマーケティング等の支援が案内されることがあります。

    出典:栃木県産業振興センター「テストマーケティング支援」

    制度の内容、募集期間、対象経費、利用条件は変更される場合があるため、利用前に公式情報を確認してください。

    支援を受ける場合も、販売したい商品、対象顧客、検証したい内容、判断基準を自社で整理しておく必要があります。

    販路拡大のKPI・予算・改善基準

    顧客が購入するまでの流れにKPIを設定する

    BtoBでは、一般的に次のような流れで受注へ進みます。

    ◆対象企業の選定→営業接触→反応→商談→見積もり→受注→継続取引

    主なKPIは次のとおりです。

    段階   主なKPI   計算例

    営業接   触提案企業数   営業した企業の合計

    反応   反応率   反応企業数÷提案企業数×100

    商談   商談化率   商談数÷提案企業数×100

    見積もり  見積率   見積件数÷商談数×100

    受注  受注率   受注件数÷見積件数×100

    採算   受注粗利益   受注売上-売上原価

    継続  継続率   継続顧客数÷新規顧客数×100

    BtoCのEC販売では、次のような流れになります。

    ◆広告・検索→サイト訪問→商品閲覧→カート投入→購入→再購入

    段階   主なKPI   計算例

    集客  サイト訪問者数  一定期間の訪問者数

    関心  商品ページ閲覧率  商品閲覧者数÷訪問者数×100

    購入検討  カート投入率  カート投入者数÷商品閲覧者数×100

    購入  購入率  購入者数÷訪問者数×100

    単価  客単価  売上高÷注文件数

    獲得費  顧客獲得単価  販促費÷新規顧客数

    継続  リピート率  再購入者数÷新規購入者数×100

    実店舗や催事では、来店者数、商品を見た人数、接客数、購入者数、客単価などを記録します。

    売上につながらない指標だけで判断しない

    ホームページの閲覧数、SNSのフォロワー数、展示会で集めた名刺の枚数は、顧客との接点を示す指標です。しかし、それだけでは販路拡大の成果とはいえません。

    表面的な指標   併せて確認する指標

    ホームページ閲覧数   問い合わせ数、商談数、購入数

    SNSフォロワー数   サイト訪問数、購入数、顧客獲得単価

    広告表示回数   クリック数、問い合わせ数、購入率

    展示会の名刺枚数   商談数、見積数、受注数

    ECの売上高   粗利益、広告費、送料、返品率

    新規顧客数   継続率、顧客別粗利益

    取扱店舗数   店舗別販売数量、返品、回収期間

    例えば、展示会で300枚の名刺を集めても、商談へ進んだ企業が2社で、受注がなければ、対象企業や展示内容、出展後の連絡方法を見直す必要があります。

    顧客獲得単価を計算する

    新しい顧客を獲得するために、いくら使ったかを確認します。

    ◆顧客獲得単価=新規顧客獲得に使った費用÷新規顧客数

    例えば、広告、営業資料、訪問交通費などに合計30万円を使い、新規顧客を3社獲得した場合、顧客獲得単価は10万円です。

    ◆30万円÷3社=1社当たり10万円

    顧客獲得単価が10万円でも、1社から得られる粗利益が30万円あり、継続受注が見込めるなら、投資を回収できる可能性があります。

    一方、1回の購入で得られる粗利益が5万円しかなく、再注文も期待できない場合は、獲得費の方が大きくなります。

    顧客数だけでなく、顧客1社または1人から得られる粗利益と比較しましょう。

    販路ごとの利益を計算する

    販路拡大では、売上から商品原価を引くだけでなく、その販路を運営するための費用も確認します。

    ◆販路別利益=売上高-売上原価-販売手数料-広告費-物流費-販路固有の追加費用

    販路固有の費用には、次のようなものがあります。

    ・ECモールの販売手数料

    ・決済手数料

    ・代理店手数料

    ・卸売価格による値引き分

    ・展示会の出展費

    ・営業交通費

    ・梱包・配送費

    ・返品・廃棄費

    ・システム利用料

    ・販路専用の人件費

    ・保守・問い合わせ対応費

    自社ECは販売手数料を抑えられる場合がありますが、サイト制作費、広告費、受注管理、問い合わせ対応などを自社で負担します。

    代理店販売は営業活動を任せられる可能性がありますが、販売手数料や卸売価格を考慮する必要があります。

    同じ売上高でも、販路によって残る利益は異なります。

    販路拡大に必要な予算を漏れなく見積もる

    予算は、初期費用、固定費、変動費、社内負担に分けて整理します。

    費用区分    主な費用

    初期費用    サイト制作、商品撮影、カタログ、試作品、出展準備

    固定費シ   ステム利用料、倉庫費、月額広告運用費、代理店管理費

    変動費   販売手数料、決済手数料、梱包費、送料、返品費

    営業費   人件費、交通費、宿泊費、サンプル提供費

    在庫・資金   原材料、仕入れ、製造費、売掛金回収までの運転資金

    外部費用   デザイン、翻訳、専門家、広告会社、営業代行

    予備費   追加修正、再製造、広告費上昇、機器故障など

    ホームページやECサイトの制作費だけを予算として考えると、広告、配送、問い合わせ対応などに必要な資金が不足する可能性があります。

    また、売上が増えるほど、仕入れや製造費を先に支払う必要が生じる場合があります。利益だけでなく資金繰りも確認してください。

    損益分岐点となる販売数を計算する

    新しい販路へ必要な固定費を回収するために、何個販売すればよいかを計算します。

    ◆1個当たり限界利益=販売価格-1個当たり変動費

    ◆損益分岐点販売数=販路の固定費÷1個当たり限界利益

    例えば、テスト販売に30万円の固定費がかかり、販売価格が1万円、商品原価や手数料などの変動費が6,000円の場合、1個当たり限界利益は4,000円です。

    ◆1万円-6,000円=4,000円

    固定費30万円を回収するには、75個を販売する必要があります。

    ◆30万円÷4,000円=75個

    テスト期間中に75個を販売できる見込みがあるか、販売後も継続購入が期待できるかを確認します。

    法人向けの商品では、1件当たりの受注粗利益を使って計算できます。

    例えば、展示会出展等に60万円かかり、1件の受注から得られる粗利益が15万円であれば、費用を回収するには4件の受注が必要です。

    ◆60万円÷15万円=4件

    ただし、社内の営業人件費や商談後の試作費が含まれていなければ、実際に必要な受注件数はさらに多くなります。

    投資回収期間を確認する

    新しい販路への投資を何か月で回収できるかも確認します。

    ◆投資回収期間=初期投資額÷月間の増加粗利益

    例えば、ECサイトや販売資料へ120万円を投資し、新しい販路から毎月20万円の粗利益が増える場合、単純計算で回収期間は6か月です。

    ◆120万円÷20万円=6か月

    ただし、月間20万円が安定して続くとは限りません。季節変動、広告費の上昇、返品、設備更新なども考慮します。

    目標を最低・標準・理想の3段階で設定する

    一つの目標だけを設定すると、少し届かなかった場合に継続の可否を判断しにくくなります。

    次のように3段階で設定すると、判断しやすくなります。

    段階   判断の考え方   BtoB営業の例

    最低基準  継続検討に必要な最低限の成果  30社へ提案し、3社と商談

    標準目標  計画どおり進んだ場合の成果  30社へ提案し、6社と商談、2社へ見積提出

    理想目標  想定を上回る成果  30社へ提案し、8社と商談、2社から受注

    数値は事業内容によって異なります。過去の営業実績、商品の単価、市場規模、商談期間などをもとに設定してください。

    KPIの結果から問題の場所を特定する

    成果が出なかった場合は、顧客が購入するまでのどの段階に問題があるかを確認します。

    発生している状態  主な原因の仮説  見直す内容

    提案しても反応が少ない  対象顧客や訴求が合っていない  顧客選定、件名、営業資料

    反応はあるが商談にならない  信頼性や具体性が不足している  実績、事例、商談への案内

    商談はできるが見積依頼がない  課題と商品が合っていない  商品内容、仕様、提案方法

    見積もりは出るが受注しない  価格、納期、条件で負けている  価格、取引条件、競合比較

    受注はするが利益が残らない  値引きや追加対応が多い  原価、価格、業務範囲

    購入されるが再注文がない  品質や購入後対応に問題がある  商品、納品、フォロー

    売上は増えたが資金が不足する  在庫や回収期間が増えている  発注量、支払・回収条件

    受注率だけを上げようとして値引きを増やすと、利益が残らなくなる場合があります。各KPIを個別に改善するのではなく、最終的な粗利益や資金繰りまで確認しましょう。

    継続・改善・中止の基準を決める

    テスト終了後は、結果を次の3つに分けて判断します。

    判断   主な状態   次の対応

    継続・拡大  目標を満たし、利益と継続需要を確認できた  対象地域、広告、取扱店等を段階的に増やす

    改善して再テスト  関心はあるが受注率や採算に問題がある  商品、価格、訴求、業務手順を修正する

    中止・保留  需要が弱く、改善しても回収が難しい  投資を止め、別の顧客や販路を検討する

    次のような場合は、改善して再テストする余地があります。

    ・問い合わせは多いが、説明不足で購入されていない

    ・顧客の希望する仕様が明確になった

    ・価格ではなく最低発注量が問題になっている

    ・商談時期が合わず、将来の検討予定が確認できた

    ・特定の顧客層だけ反応が良い

    ・広告では反応が弱いが、紹介では商談化している

    一方、次のような場合は中止や保留を検討します。

    ・十分な数の顧客へ提案しても課題への関心がない

    ・顧客が支払える価格では利益を確保できない

    ・顧客獲得単価が粗利益を上回り、継続購入も期待できない

    ・必要な品質や納期を自社で維持できない

    ・在庫や売掛金による資金負担が大きすぎる

    ・法規制や契約上のリスクへ対応できない

    ・既存事業へ大きな悪影響が出ている

    すでに費用を使ったという理由だけで、成果の出ない販路を続けてはいけません。

    評価期間は販路と商談期間に合わせる

    BtoCの商品は購入までの期間が比較的短い場合がありますが、BtoBでは提案から受注まで数か月以上かかることがあります。

    そのため、BtoBのテストを1か月の売上だけで判断するのは適切ではありません。

    例えば、次のように確認時期を分けます。

    ・毎週:提案数、反応数、問い合わせ内容

    ・毎月:商談数、見積数、広告費、販売数、粗利益

    ・四半期:受注率、顧客獲得単価、継続見込み

    ・半年・1年:継続取引、累計粗利益、投資回収状況

    季節商品や観光需要に関係する商品では、実施した時期によって結果が変わります。一度のテストだけで年間需要を判断しないようにしましょう。

    販路別の管理表を作成する

    結果を継続的に確認するため、次のような管理表を作成します。

    KPI 目標 実績 差異 主な原因 次の対応 担当者 期限

    提案企業数 30社 25社 -5社 営業リスト作成の遅れ 対象企業を追加する 営業担当 ○月○日

    商談数 6社 4社 -2社 返信率が低い 提案文を修正する 営業担当 ○月○日

    見積数 3社 3社 0社 - 商談後の連絡を継続 営業担当 ○月○日

    受注数 2社 1社 -1社 納期条件が合わない 生産日程を見直す 製造責任者 ○月○日

    受注粗利益 30万円 12万円 -18万円 試作費が増加した 試作の有料化を検討 経営者 ○月○日

    数値を記録するだけでなく、差が生じた理由、次に実施すること、担当者、期限まで決めます。

    成果が出た後も段階的に販路を拡大する

    テストで成果が出ても、すぐに販売地域、広告費、在庫、取扱店舗をすべて増やす必要はありません。

    次のように、一段階ずつ拡大します。

    ①特定の顧客層で需要を確認する

    ②利益と業務負担を確認する

    ③受注・出荷手順を標準化する

    ④生産能力と人員を確認する

    ⑤広告費や営業対象を少し増やす

    ⑥再度KPIと利益を確認する

    ⑦対応地域や商品数を広げる

    注文が増えた結果、納期遅延、品質低下、問い合わせ対応の遅れが起きれば、顧客の信用を失う可能性があります。

    販路拡大では、「販売できるか」だけでなく、「品質と利益を保ちながら供給を続けられるか」まで確認することが重要です。

    次章では、販路拡大に利用できる栃木県内の相談窓口、商談会、専門家支援、補助金等と、支援策を利用するときの注意点を解説します。

    販路拡大で使える栃木県の支援策

    販路拡大で使える栃木県の支援策

    栃木県内の中小企業が販路拡大へ取り組む際は、自社だけで市場調査、営業先の選定、商談、広告、補助金申請まで行う必要はありません。

    県内には、無料の経営相談、専門家派遣、取引あっせん、商談会、展示会への出展支援、海外展開支援、補助金・助成金など、複数の支援策があります。

    ただし、支援機関へ相談すれば取引先を獲得できる、補助金へ採択されれば販路拡大に成功するというものではありません。

    支援策を利用する前に、少なくとも次の内容を整理する必要があります。

    ・販売したい商品・サービス

    ・想定する顧客

    ・顧客が抱えている課題

    ・自社の商品が選ばれる理由

    ・希望する販売地域

    ・現在の販路と販売実績

    ・販売価格と粗利益

    ・生産・提供できる数量

    ・販路拡大に使える予算

    ・支援機関へ相談したい内容

    ・達成したい売上・利益目標

    「補助金があるから展示会へ出展する」「無料で紹介してもらえるから商談する」という順番ではなく、自社の販路拡大戦略を実行するために、必要な支援策を選びましょう。

    販路拡大の相談先・商談会・補助金

    栃木県内には、販路拡大の目的や企業の状況に応じた相談先があります。

    最初に、自社が何を支援してほしいのかを明確にします。

    相談したい内容    主な相談先

    販路拡大の方向性を整理したい  栃木県よろず支援拠点、商工会・商工会議所

    法人の取引先を探したい  栃木県産業振興センター、商談会、金融機関

    展示会へ出展したい  栃木県産業振興センター、商工会・商工会議所

    WebやSNSを改善したい  栃木県よろず支援拠点、専門家派遣

    商品やパッケージを改善したい  栃木県よろず支援拠点、産業支援機関、デザイン専門家

    補助金を活用したい  商工会・商工会議所、よろず支援拠点、認定支援機関

    海外へ販売したい  ジェトロ栃木、栃木県、栃木県産業振興センター

    技術や品質を評価してほしい  栃木県産業技術センター、業界団体、認証機関

    資金調達も併せて相談したい  金融機関、日本政策金融公庫、商工会・商工会議所

    農産物を活用した商品を販売したい  農商工連携に関する支援機関、県・市町、商工団体

    栃木県よろず支援拠点へ相談する

    販路拡大の方向性が定まっていない場合は、栃木県よろず支援拠点へ相談する方法があります。

    栃木県よろず支援拠点は、中小企業・小規模事業者を対象とする無料の経営相談所です。相談内容に応じて、中小企業診断士、Web・SNS、デザイン、IT、補助金、財務などの専門家へ相談できます。

    販路拡大に関しては、次のような相談が考えられます。

    ・自社の強みの整理

    ・狙う顧客や市場の選定

    ・販路拡大計画の作成

    ・商品・サービスの見直し

    ・価格設定

    ・WebサイトやSNSの改善

    ・ECサイトの立ち上げ

    ・チラシや営業資料の改善

    ・ブランディング

    ・補助金の活用

    ・売上・利益計画の作成

    同拠点では、経営上のさまざまな相談へ何度でも無料で対応すると案内しています。ただし、広告運用、営業代行、ホームページ制作、申請書の作成代行などを直接行うとは限りません。

    まず課題と実行方針を整理し、自社で行う業務と外部へ依頼する業務を分けるために利用するとよいでしょう。

    出典:栃木県よろず支援拠点

    地域の商工会・商工会議所へ相談する

    所在地を管轄する商工会または商工会議所では、経営指導員等へ販路拡大、資金調達、経営計画、補助金などを相談できます。

    主な支援内容として、次のようなものがあります。

    ・経営計画の作成

    ・販路拡大施策の整理

    ・小規模事業者持続化補助金等の相談

    ・展示会や商談会の案内

    ・専門家派遣

    ・商品PRや物産展への参加

    ・Web・SNS活用

    ・金融相談

    ・記帳・税務相談

    ・セミナーや個別相談会

    栃木県商工会連合会のエキスパートバンクでは、経営や技術上の課題に応じて専門家を活用する仕組みが案内されています。POP、店内ディスプレイ、ホームページ、新商品開発、ブランディングなども相談例として挙げられています。

    出典:栃木県商工会連合会「エキスパートバンク」

    商工会・商工会議所によって、実施する商談会、専門家派遣、会員向けサービスなどは異なります。所在地を管轄する団体へ確認してください。

    また、小規模事業者持続化補助金を申請する場合は、地域の商工会・商工会議所が発行する書類について、申請締切とは別に受付期限が設けられることがあります。公募開始後ではなく、計画段階から早めに相談しましょう。

    栃木県産業振興センターへ相談する

    公益財団法人栃木県産業振興センターでは、県内中小企業の取引拡大や販路開拓に関する支援を行っています。

    主な支援として、次のようなものがあります。

    ・販路開拓に関する専門家相談

    ・発注企業と受注企業の取引あっせん

    ・ビジネスマッチング商談会

    ・展示会・展示商談会の案内

    ・展示会出展等に関する助成

    ・新商品開発や販路開拓に関する助成

    ・企業情報や発注案件に関する情報提供

    出典:栃木県産業振興センター「取引先を増やしたい」

    特に、製造業が新しい発注企業を探す場合は、取引あっせんやビジネスマッチング商談会を利用できる可能性があります。

    令和8年度の「とちぎビジネスマッチング商談会」では、県内外の発注企業と県内の受注企業が参加する商談機会が設けられました。

    出典:栃木県産業振興センター「令和8年度とちぎビジネスマッチング商談会」

    ただし、商談会へ参加しただけで取引が成立するわけではありません。参加前に次の内容を準備しておきましょう。

    ・自社が受注したい業務

    ・対応可能な材質、加工方法、数量

    ・保有設備

    ・品質管理体制

    ・対応できる納期

    ・過去の実績

    ・得意とする案件

    ・対応できない案件

    ・希望する取引条件

    ・商談後の連絡担当者

    発注企業が何を求めているかを確認し、自社の設備一覧を説明するだけでなく、相手の課題へどのように対応できるかを伝える必要があります。

    商談会・展示会は目的に合わせて選ぶ

    商談会と展示会では、参加者や進め方が異なります。

    比較項目   商談会   展示会

    主な目的  特定の相手と具体的な商談を行う  多数の来場者へ商品や技術を紹介する

    相手  発注企業、バイヤー、商社など  業界関係者、企業、一般消費者など

    商談方法  事前予約や時間制の場合が多い  ブースへ来場した相手へ説明する

    主な準備  相手企業の調査、提案書、質問事項  展示物、パネル、説明員、来場者対応

    主な成果指標  商談数、見積数、受注数  有望顧客数、商談数、見積数

    主な注意点  相手ごとに提案を変える  名刺収集だけで終わらせない

    展示会を選ぶときは、来場者数だけでなく、次の点を確認します。

    ・自社が狙う業種や顧客が来場するか

    ・過去の来場者の役職や目的

    ・出展企業の傾向

    ・商談中心か情報収集中心か

    ・出展料以外に必要な費用

    ・展示物の搬入・撤去費

    ・説明員を配置できるか

    ・商談後のフォローを行えるか

    ・過去の出展者がどのような成果を得たか

    展示会終了後は、名刺を一律に扱うのではなく、相手の関心度によって分類します。

    分類   相手の状態   主な対応

    優先度A  見積もりや試作品を希望している  数日以内に具体的な提案を行う

    優先度B  課題があり、情報収集している  資料送付後に商談を提案する

    優先度C  将来的な可能性がある  定期的に事例や新商品情報を送る

    対象外自社の顧客にならない必要以上に営業費をかけない

    とちぎ未来チャレンジファンドを確認する

    栃木県産業振興センターでは、「とちぎ未来チャレンジファンド活用助成事業」を実施しています。

    同事業には、技術の高度化、新製品開発、生産性向上、販路開拓、認証取得などに関する支援区分があります。

    令和8年度には、販路開拓・認証取得助成事業について、上限150万円の助成制度が案内されました。

    出典:栃木県産業振興センター「令和8年度とちぎ未来チャレンジファンド活用助成事業」

    対象となる事業、助成率、対象経費、募集期間は年度や支援区分によって異なります。

    また、交付決定前に発注や契約を行った経費は対象外になる場合があります。展示会の申込期限が先に到来する場合もあるため、申請前に事務局へ確認してください。

    小規模事業者持続化補助金を確認する

    小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等が、自ら作成した経営計画に基づいて行う販路開拓等を支援する制度です。

    出典:中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」

    活用が考えられる取り組みには、次のようなものがあります。

    ・チラシやカタログの作成

    ・広告掲載

    ・Webサイトの改修

    ・店舗改装

    ・展示会への出展

    ・新商品の試作

    ・パッケージの変更

    ・販路開拓に必要な機械装置等の導入

    ・販路開拓と併せて行う業務効率化

    ただし、対象経費は公募回や申請枠によって異なります。単に古い設備を更新する、会社案内を作る、ホームページを全面的に作り直すというだけでは、販路開拓とのつながりを十分に説明できない可能性があります。

    次の関係を具体的に示すことが重要です。

    ◆経営課題→対象顧客→実施する販路開拓策→必要な経費→期待する成果

    例えば、展示会への出展費を申請する場合は、「展示会へ出たい」だけでなく、対象となる来場者、提案する商品、商談目標、出展後のフォロー方法、売上・利益計画まで整理します。

    農林水産物を活用する場合は農商工連携の支援を確認する

    栃木県産の農林水産物等を活用して新商品やサービスを開発し、販路を開拓する場合は、「フードバレーとちぎ農商工ファンド活用助成事業」等を利用できる可能性があります。

    令和8年度の案内では、県産農産物等を活用して開発した新商品・新役務について、市場動向調査、展示・商談会の開催や出展など、販路開拓に必要な経費を支援する区分が示されました。

    出典:栃木県産業振興センター「フードバレーとちぎ農商工ファンド活用助成事業」

    農業者と中小企業者の連携が必要になる制度や、対象となる農産物、事業期間等に条件がある制度もあります。

    自社単独で利用できるか、連携体を構成する必要があるかを確認しましょう。

    海外販路を検討する場合はジェトロ栃木へ相談する

    海外展開を検討している場合は、ジェトロ栃木へ相談できます。

    ジェトロでは、輸出入や海外進出に関する実務情報の提供、貿易投資相談、海外市場に関する情報提供、商談会などを実施しています。

    出典:ジェトロ「ジェトロ栃木」

    海外販路では、国内販売に加えて次の内容を確認する必要があります。

    ・対象国の市場規模

    ・現地の顧客ニーズ

    ・輸入規制

    ・関税

    ・表示・ラベル

    ・必要な認証

    ・商標や知的財産

    ・契約条件

    ・決済通貨

    ・代金回収

    ・為替変動

    ・輸送費

    ・破損・返品

    ・現地代理店との役割分担

    栃木県では、県内中小企業等の海外見本市への出展、海外電子商取引、海外向け商品開発・改良、国際規格・認証取得などを対象とする補助事業が実施される場合があります。

    令和8年度の海外販路開拓・拡大支援事業費補助金では、補助率4分の3以内、上限50万円として募集されましたが、2026年5月29日で募集を終了しています。

    出典:栃木県「令和8年度海外販路開拓・拡大支援事業費補助金」

    制度の継続や次回募集は保証されていないため、最新の募集状況を確認してください。

    市町独自の販路開拓支援を確認する

    栃木県内の市町では、地域の事業者を対象に、展示会出展、広告、EC、創業、新商品開発などを支援する制度が設けられる場合があります。

    確認する主な場所は次のとおりです。

    ・本店・事業所がある市町のホームページ

    ・市町の商工担当課

    ・地域の商工会・商工会議所

    ・産業支援施設

    ・金融機関

    ・栃木県よろず支援拠点

    ・栃木県産業振興センター

    県や国の補助金と市町の補助金では、同じ経費へ重複して補助を受けられないことがあります。

    複数の制度を利用する場合は、対象経費を分けられるか、併用可能かをそれぞれの事務局へ確認してください。

    販路拡大で失敗しない申請・実行時の注意点

    支援策を探す前に経営課題を整理する

    最初に、販路拡大が必要な理由を明確にします。

    例えば、次のように整理します。

    項目     記載例

    現在の問題   売上の60%を1社へ依存している

    発生している影響   発注減少により工場稼働率が低下している

    狙う顧客   関東圏の産業機械メーカー

    提案する価値   小ロット・短納期の試作加工

    販路   直接営業と専門展示会

    目標   1年間で新規取引先3社を獲得する

    必要な支援   営業資料の改善、商談機会、展示会費用

    成果指標   商談数、見積数、受注数、受注粗利益

    このように整理すれば、専門家相談、商談会、展示会助成など、どの支援策が必要か判断しやすくなります。

    補助金を前提に事業を決めない

    助金は、必要な取り組みの負担を軽減する制度です。補助金を受けること自体を事業の目的にしてはいけません。

    次のような進め方には注意が必要です。

    ・補助対象になる設備から購入品を決める

    ・補助上限まで使うために不要な経費を追加する

    ・採択前提で資金計画を作る

    ・販売先が決まっていないのに大量生産する

    ・運用担当者がいないままECサイトを構築する

    ・出展目的が曖昧なまま展示会へ申し込む

    ・広告後の問い合わせ対応を決めていない

    ・補助事業終了後の維持費を計算していない

    補助金が利用できなくても実施すべき事業か、事業規模を縮小してテストできないかを検討しましょう。

    申請前に公募要領を最後まで確認する

    補助金や助成金では、制度ごとに対象者、対象事業、対象経費、期間、申請方法が異なります。

    少なくとも次の項目を確認してください。

    ・対象となる事業者

    ・業種や企業規模の条件

    ・所在地の条件

    ・対象となる取り組み

    ・補助率・助成率

    ・上限額・下限額

    ・対象経費

    ・対象外経費

    ・事業実施期間

    ・申請期限

    ・交付決定予定時期

    ・電子申請に必要なアカウント

    ・見積書の必要数

    ・加点・減点要件

    ・賃上げ等の要件

    ・実績報告の期限

    ・補助金の支払時期

    ・取得財産の処分制限

    ・売上等の報告義務

    前年の公募要領や解説記事だけで判断せず、申請する回の正式な公募要領を確認します。

    交付決定前の契約・発注・支払いに注意する

    補助金や助成金では、交付決定前に契約、発注、支払いを行った経費が対象外になる場合があります。

    特に注意したいのは次の経費です。

    ・展示会の出展料

    ・ブース設営費

    ・ホームページ制作費

    ・広告契約

    ・ECシステムの利用契約

    ・機械装置の購入

    ・商品撮影

    ・デザイン費

    ・コンサルティング費

    ・印刷費

    ・試作品の材料費

    展示会の申込期限が補助金の交付決定より前になる場合は、申込行為が発注や契約に該当するか、事前に事務局へ確認してください。

    口頭で確認した場合も、回答日、担当者、回答内容を記録しておきましょう。

    補助金は原則として後払いになることを想定する

    多くの補助金では、事業者が先に経費を支払い、事業終了後に実績報告と確定検査を経て補助金を受け取ります。

    例えば、補助対象事業に300万円必要で、補助予定額が200万円であっても、一時的に300万円全額を自社で用意しなければならない場合があります。

    資金計画では次の時期を確認します。

    ・契約時の支払い

    ・納品時の支払い

    ・広告費や出展費の支払い

    ・売上が発生する時期

    ・売掛金を回収する時期

    ・実績報告を提出する時期

    ・補助金が入金される時期

    ・借入金を返済する時期

    採択されても、対象経費として認められなかった部分や、申請額から減額された部分は自社負担になります。

    補助金の入金まで資金を維持できるか、金融機関や支援機関へ早めに相談しましょう。

    採択と交付決定を混同しない

    採択は、申請した事業が審査で選ばれたことを意味します。採択された時点で、申請額の全額が必ず支払われるとは限りません。

    一般的には、次のような段階があります。

    ①公募要領を確認する

    ②申請する

    ③審査を受ける

    ④採択される

    ⑤交付申請を行う

    ⑥交付決定を受ける

    ⑦補助事業を実施する

    ⑧実績報告を行う

    ⑨確定検査を受ける

    ⑩補助金額が確定する

    ⑪補助金を請求する

    ⑫補助金が入金される

    制度によって手順は異なります。交付決定前に事業を開始してよいか、採択後に計画を変更できるかを確認してください。

    見積書は金額だけでなく業務内容を確認する

    Web制作、広告、展示会、デザイン、システム導入などを外部へ発注する場合は、見積書の内容を具体化します。

    確認項目    確認する内容

    業務内容  何をどこまで実施するか

    成果物  ページ、写真、原稿、広告、報告書等

    数量  ページ数、掲載回数、出稿期間等

    納期  制作開始日、確認日、完成日

    修正  無料修正の回数、追加料金

    運用  公開後の更新、広告管理、保守

    権利  写真、デザイン、原稿等の使用権

    アカウント  誰の名義で作成し、誰が管理するか

    追加費用  交通費、素材費、手数料、月額費

    解約  中止した場合の費用と成果物の扱い

    「ホームページ制作一式」「広告運用一式」といった記載だけでは、実績報告で業務内容を説明しにくい場合があります。

    相見積もりが必要か、選定理由書が必要かも公募要領で確認しましょう。

    経費の証拠書類を最初から保存する

    補助事業では、実績報告時に契約、発注、納品、支払いを確認できる資料が必要です。

    主な証拠書類は次のとおりです。

    ・見積書

    ・相見積書

    ・発注書

    ・契約書

    ・納品書

    ・請求書

    ・振込記録

    ・領収書

    ・通帳の写し

    ・クレジットカード利用明細

    ・成果物

    ・広告掲載画面

    ・展示会の写真

    ・出展者名簿

    ・旅費の記録

    ・作業報告書

    ・メール等のやり取り

    支払方法が指定されている場合や、現金払い、手形払い、ポイント利用、個人名義カードによる支払いが認められない場合があります。

    採択後に証拠書類を集めるのではなく、事業開始時から整理しましょう。

    計画変更は事前に承認を受ける

    申請時と異なる商品を購入する、外注先を変更する、金額を大幅に変更する、事業期間を延長するといった場合は、事前承認が必要になることがあります。

    次のような変更を自己判断で行わないようにしてください。

    ・機械やシステムの機種変更

    ・委託先の変更

    ・経費区分間の金額変更

    ・展示会の変更

    ・広告媒体の変更

    ・事業期間の延長

    ・事業内容の縮小

    ・目標や成果物の変更

    変更が発生した時点で事務局へ相談し、必要な手続きを確認します。

    補助事業の成果を売上・利益で確認する

    実績報告を提出して補助金を受け取っても、販路拡大は完了していません。

    事業終了後は、次の指標を確認します。

    ・問い合わせ数

    ・商談数

    ・見積数

    ・受注数

    ・販売数量

    ・新規顧客数

    ・売上高

    ・粗利益

    ・顧客獲得単価

    ・リピート率

    ・投資回収期間

    ・販路別の業務時間

    ・在庫と資金繰り

    例えば、補助金を使ってECサイトを構築しても、広告、商品登録、受注処理、問い合わせ対応、分析を継続しなければ、販売経路として機能しません。

    展示会へ出展した場合も、出展当日の売上ではなく、終了後の商談、見積もり、受注、粗利益まで追跡しましょう。

    支援機関ごとの役割を理解する

    相談先によって、対応できる範囲は異なります。

    支援者   主な役割   一般的に期待しにくいこと

    よろず支援拠点  課題整理、助言、計画や施策の検討  営業代行、制作代行

    商工会・商工会議所  経営相談、計画作成支援、制度案内  受注や採択の保証

    産業振興センター  取引支援、商談会、助成制度  継続的な営業活動の代行

    ジェトロ  海外情報、相談、商談機会  海外販売の保証

    金融機関  資金調達、取引先紹介、情報提供  事業の実行責任

    民間専門家  分析、計画、営業・実行支援  成果の無条件保証

    制作・広告会社  Web、広告、デザイン等の制作・運用  経営全体の判断

    紹介された取引先や専門家であっても、自社で支援内容、料金、実績、契約条件を確認してください。

    相談前に準備する資料をまとめる

    支援機関へ相談する際は、次の資料を用意すると、具体的な助言を受けやすくなります。

    ・会社概要

    ・商品・サービス資料

    ・直近3期分の決算書

    ・月次試算表

    ・顧客別・商品別・販路別の売上

    ・商品別の原価と粗利益

    ・現在の販売先

    ・営業資料やカタログ

    ・ホームページやSNSの情報

    ・これまで実施した販促施策

    ・施策ごとの費用と成果

    ・生産能力・提供体制

    ・販路拡大の目標

    ・実行したい施策

    ・見積書

    ・検討している補助金等の公募要領

    すべての資料がそろっていなくても相談はできます。不足している情報を確認し、次回までに整理する方法もあります。

    販路拡大の5つの手順を実行する

    ここまで解説した販路拡大戦略は、次の5つの手順にまとめられます。

    ①現在の顧客、商品、販路、利益を分析する

    ②狙う顧客と市場を決める

    ③顧客へ伝える価値と販売チャネルを選ぶ

    ④小規模なテストを行い、KPIと利益を確認する

    ⑤支援策を活用しながら、成果の出た販路を拡大する

    最初から複数の販路へ同時に投資する必要はありません。

    既存顧客への追加提案、休眠顧客への再営業、対象を絞った展示会、少数店舗でのテスト販売など、自社が管理できる範囲から始めます。

    結果を売上だけで判断せず、粗利益、顧客獲得単価、業務負担、資金繰り、継続購入まで確認し、改善を繰り返すことが重要です。

    Komaki Business Partnersでは、栃木県内の中小企業を対象に、現状分析、強みの整理、狙う顧客・市場の選定、営業戦略、販路開拓計画、KPI設定、補助金活用などを支援しています。

    「商品や技術には自信があるが販売先を増やせない」「展示会へ出展しても受注につながらない」「WebやSNSへ費用をかけたが成果を確認できない」「補助金を使って何を実施すべきか整理したい」といった場合は、設備や広告を発注する前にご相談ください。

    Komaki Business Partners

    中小企業・小規模事業者様ごとの強みと地域性・市場ニーズを踏まえた現実的なコンサルをしています。現場の状況に合わせた「経営改善」、営業導線や訴求内容を見直して元営業の経験を活かした「売れる仕組みづくり」をご支援します。経営革新等支援機関として認定されています。

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    〒329-2751
    栃木県那須塩原市東三島3丁目43−26

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